蘇乘羽は方晴に手を出さなかった。この女は本質的には悪くない、ただ恵まれた環境で育ち、性格が少し傲慢なだけで、今日のような事態を引き起こしてしまったのだ。
蘇乘羽は剣先で崔岩の槍を弾き上げ、手に取った。
「この槍はなかなかいいものだな。今からこれは私のものだ。戦利品として頂戴する。彼女を連れて行くがいい」
「蘇乘羽!私の槍を返せ!」
崔岩は諦めきれなかった。この槍は蔡拳門の先人が遺したもので、彼が槍術に精通していたため、蔡義根が彼に授けたものだった。
もし蘇乘羽に持って行かれたら、門に戻っても申し開きができず、必ず厳しい処罰を受けることになる!
「力があるなら、自分で取りに来い」蘇乘羽は冷たく言った。
「もういいわ、師兄、あの人に渡しましょう!」
方晴が崔岩を支えて去る中、李元滄は観客席から飛び降り、長髪を振りながら言った。「お前、本当に命が強いな。剣を返せよ」
蘇乘羽は手にした瀾滄剣を見つめた。この剣は並のものではない、おそらく法器だろう。ただ李元滄の手にあっては普通の武器としてしか使えない。蘇乘羽の手にあれば、その真の力を発揮できるのに。
法器は修真者の霊力で活性化させてこそ、本当の威力を発揮できる。
蘇乘羽は瀾滄剣を李元滄に投げ返した。李元滄はそれを受け取り、鞘に収めた。
「お前の剣はいい剣だ。大切にしろよ。今日は助かった」と蘇乘羽は言った。
「助かったって何だよ!最初から貸すんじゃなかった。お前が崔岩にやられりゃよかったんだ。かっこつけやがって!」
李元滄は剣を肩に担ぎ、颯爽と立ち去った。気迫では蘇乘羽に負けたくなかったのだ。
曾一凡もこの時近づいてきたが、傍に龍魂司使がいたため、蘇乘羽とは多くを語らず、ただ肩を叩いただけだった。その意図を蘇乘羽は理解した。気をつけろという警告だった。
蘇乘羽は、一戦で名を上げた。
この戦いの後、霖江では彼の名を知らない者はいなくなるだろう。そして、あの侮辱的な「緑亀」や「軟頭亀」といったあだ名も、もう誰も口にしなくなるだろう。
半歩宗師の境地に達した者を、誰が軽々しく挑発できようか?
蘇笑笑はクラスメートと共に蘇乘羽の元へ駆け寄り、彼の胸に飛び込んで喜びを表した。