蘇乘羽は鼻をこすり、唇に残る香りを感じながら、少し物足りない気持ちで思わず感嘆した。「俺のこの致命的な魅力よ。」
蘇乘羽は車に向かい、東陵飯店を後にした。
柳妍も自分の車に戻り、蘇乘羽の車が去っていくのを見ながら、顔の妖艶な表情が一瞬で消えた。
「南枝、私ができることは、すべてやったわ。あなたと彼が、ずっと一緒に歩んでいけますように、白髪になるまで!」
柳妍は先ほど東陵飯店から出てきたとき、道路の向かい側に車を見かけた。林初雪の車だと分かった。
林初雪と蘇乘羽の一夜の関係についても、柳妍は知っていた。
以前、許南枝の命が長くないとき、彼女が蘇乘羽のために後ろ盾を探したことを、柳妍は理解できた。
しかし今や許南枝の病気は良くなり、死ぬ必要はなくなった。柳妍は当然、蘇乘羽と林初雪の間にこれ以上の関係を望んでいなかった。
林初雪がレズビアンだとしても、今日体育館で柳妍が林初雪を見たとき、彼女の目から、林初雪が蘇乘羽に心を動かされていることを感じ取った。
柳妍が林初雪がここにいることに気づいたとき、彼女は考えを巡らせた。蘇乘羽にキスしたのも意図的なものだった。完全に意図的とは言えないかもしれないが、確かに少し私心があり、酔いに任せた部分もあった。
三分の一は自分のためのキスで、残りの三分の二は林初雪に見せるためのキスだった。林初雪の性格からすれば、この光景を見たら、蘇乘羽に対する好感はもう持たないだろう。
「林お嬢さん、恨まないでください。私は南枝を助けなければならないの。あなたに彼女と蘇乘羽の関係を壊されるわけにはいかないわ。」
柳妍はため息をつき、車を走らせて去っていった。
林初雪は猛スピードで走り続け、気づかないうちに涙で視界が曇り、あふれ出していた。彼女が辛うじて開いた心は、再び閉ざされてしまった。
「蘇乘羽、私はあなたを憎む!憎むわ!!」
林初雪は初めて本当の心の痛みを体験した。彼女をほとんど狂わせるほどの痛み、全身を震わせるほどの痛み。林初雪は手を上げて涙を拭い、目が次第に冷たくなっていった。
車を運転していた蘇乘羽はくしゃみをし、鼻をこすった。
「誰かが俺の悪口を言ってるな?」