第38章:経蔵閣、3600の仙穴妙法【新作応援求む】

早朝。

葉平は目を開けた。

簡単な身支度を済ませた後、葉平は部屋を出た。

山林には薄い霧が漂い、まるで仙境のように見えた。

かすかな鐘の音が響き、心が洗われるようだった。

葉平は腰を伸ばし、思わず独り言を呟いた。

「清晨入古寺、初日照高林」

「曲径通幽処、禅房花木深」

「山光悦鳥性、潭影空人心」

「万籟此皆寂、唯聞鐘磬音」

これは詩人常建の「題破山寺後禅院」だ。

この詩は場所にそぐわないかもしれない。ここは道館であって古寺ではないからだ。しかし、周りに誰もいないので、葉平は感じるままに詠んだだけで、場所にこだわる必要もなかった。

伸びをした後、葉平は直接青雲道宗へと向かった。

経蔵閣に行って、修仙の知識を補おうと思ったのだ。

昨夜、葉平は造化錬丹術、つまり洛塵師兄から貰った秘籍を読んでいた。

しかし後半を読んで、葉平は今の自分には錬丹できないことを悟った。

秘籍の中の造化錬丹術は、体内に靈氣がなければ丹藥を錬成できないのだ。

気を以て靈を引き、靈を以て神と化し、神を以て丹を凝らす、これぞ無垢霊丹なり。

言い換えれば、自身の靈氣を使って天地靈氣を引き寄せ、そして意志と精神で丹藥を凝結させることで、無垢霊丹、すなわち無毒の丹を錬成できるのだ。

方法は理解したものの、靈氣がないため、葉平はこの件を一旦保留にするしかなかった。

今最も重要なのは、修仙の知識をしっかりと補うことだ。

青雲道宗。

いくつかの大殿は塵一つなく、極めて質素で整然としており、外の人気のある道観とは全く異なっていた。

おそらく、これこそが隱世門派の風格なのだろう。

両袖清風にして、超然として上に在り。

葉平はこの思想と態度に深く敬服した。世と争わず、天命を知り、道理を蘊む。

一見すべてが極めて平凡に見えるが、大道は至って簡なり。最も単純なものこそ、無限の道理を蘊んでいるのだ。

例えば宗門の大殿の外にある香炉には、なぜ常に一本の線香だけが立てられているのか?

まさか青雲道宗に線香を買う余裕がないというわけではあるまい。

それは明らかに不可能だ。

所謂心誠なれば則ち霊あり。心誠なれば一炷香で足り、心誠ならざれば、山一つの香火も気運の加護をもたらすことはできない。

葉平は香炉の中の一本の線香を見つめながら、感慨に耽った。

小さな一炷香の中に、かくも多くの道理が蘊まれているとは。

隱世門派、一言で言えば。

絶妙だ。

意識を戻し。

葉平は経蔵閣に入った。

青雲道宗の経蔵閣はそれほど大きくなく、全部で四つの書架があり、それぞれの書架には多くの秘籍が並べられていた。

葉平は非常に礼儀正しく、むやみに本を手に取ることもなく、歩く足取りさえ軽やかだった。

しかし経蔵閣に足を踏み入れ、書架の秘籍に目を向けた途端、葉平は完全に呆然となった。

【十龍十象元神術】

【仙道重瞳開眼法】

【完璧なる無上異象】

【真龍無上大神通】

【天帝剣法】

【三千六百仙竅妙法】

【天罡三十六神通】

【地煞七十二道法】

……

経蔵閣の中で。

葉平は完全に呆然としていた。

青雲道宗が隱世門派だとは知っていたが、まさかここまで恐ろしい存在だとは思わなかった。

これらの秘籍は、見るまでもなくその凄さが分かった。

しかし葉平を更に震撼させたのは、これほどの秘籍がただ何の変哲もなく書架に並べられているということだった。

周囲には陣法術による保護も、他のいかなる防護手段も施されていない。

これが隱世門派というものなのか?

素晴らしい、素晴らしすぎる。

葉平は興奮した。

本当に興奮してしまった。

もし誰かがこれを隱世門派ではないと言うなら、即座に剣を振るって切り捨ててやるところだ。

重瞳!元神術!真龍大神通!天帝剣法!天罡七十二神通?

葉平は興奮で体を震わせた。

これは予想外の喜び、まさに予想外の喜びだ。

しかししばらくして、葉平は深く息を吸い、必死に冷静さを取り戻そうとした。

「葉平、興奮するな。ここにある本はどれも絶世の秘籍だが、すべてが学べるとは限らない。冷静に、冷静になるんだ。」

葉平は何度も深呼吸を繰り返し、ようやく感情を落ち着かせることができた。

彼は理解していた。ここに多くの秘籍が置かれているとはいえ、学べるかどうかは別問題だ。

どんな秘籍でも与えられれば習得できるというわけではない。

それに、むやみに秘籍を修練して、もし何か問題が起きたらどうする?宗主や師兄たちに咎められたらどうする?

そう考えると、葉平はさらに冷静さを取り戻した。

迷ってはいけない。

そう、迷ってはいけないのだ。

葉平は自分に言い聞かせ続けた。興奮してはいけない、平常心を保たなければならない。しかし内心はまだ興奮状態のままだった。

考えてみれば、誰がこのような秘籍を目の当たりにして、冷静でいられるだろうか?

経蔵閣の秘籍を見て、葉平は青雲道宗が隱世門派であることを無条件に信じるようになった。

しかし葉平は実際にはこれらの秘籍を読まなかった。

代わりに、【青州風雲録】や【晉國奇譚録】といった修仙界に関する他の資料を読んでいた。

これらの書物は非常に分厚かった。

葉平は忍耐強く、経蔵閣で昼から夜まで読み続けた。

丸七刻の間。

葉平は七刻もの間本を読み、経蔵閣にある四十五冊の奇譚録を読み終えた。

頭の中で青州、晉國、そして十國の仙門についておおよその理解が得られ、宗門勢力、朝廷体制、そして様々な珍しいものについても理解できた。

「まさか、この世界では皇朝の力が仙門に全く劣らないとは。」

葉平は独り言を呟いた。

書物の記載によると、皇朝は凡俗を統治し、仙家道門は超然として上に在り朝廷の管轄外にあるものの、仙門道宗は朝廷に及ばず、ある事柄については朝廷に協力しなければならないという。

協力関係ではあるが、皇朝の方がより主導権を持っているのだ。

しかしよく考えれば当然だ。修仙世界において、皇朝に修仙者がいないはずがない。膨大な人口の中から、必ず強者は生まれる。そして一度国家機構が動き出せば、それは無敵の力となる。

仙家道門にも絶世の仙人はいるが、問題は仙家道門が互いに秘密を隠し合い、どんな絶学も伝承も隠し持ち、真の伝承を得なければ法門に入れないということだ。一方朝廷は違う。努力して朝廷のために尽くせば、欲しい資源も絶学も与えられる。

そしてさらに重要な点は。

名利だ!

天下の人々が集まるのは利のため、天下の人々が争うのも利のため。

王となり祖となることを望まない者がいるだろうか?天下を号令することを望まない者がいるだろうか?街を歩けば人々が道を開けることを望まない者がいるだろうか?

確かに名利に関心を持たない者もいるだろうが、そのような人は果たしてどれほどいるだろうか?

まるで七、八十歳の老人が、美色を貪ってはいけないと若者を諭すようなものだ。

それは当然だ。もう七、八十歳なのだから。若い頃は毎日のように女遊びをしていたくせに、年を取ってから他人に美色を貪るなと説教する。

美色というものは、おそらく数百年あるいは千年以上も修行を積んだ修士にとっては、確かに誘惑とはならないだろう。

しかし権力は?

一言で百万の大軍を号令できる権力は?

さらには万人の上に立つ皇位は?

そういうわけで、朝廷の力は宗門を上回るのだ。

ここまで考えて、葉平は突然はっとした。

そして何だか急に気分が悪くなった。

こんなことなら、なぜ五十回以上も昇仙大會に参加したのだろう。

直接科挙を受けて状元の位を得れば、朝廷に入れば修仙の道も開けたはずなのに。

すべてあのネット小説のせいだ。どれもこれも朝廷をまるで取るに足らないもののように描いて、本当に人を惑わすものだ。

しかしすぐに、葉平は違和感を覚えた。

「もし私が早くからこれを知っていたら、隱世門派と出会うこともなかったのでは?」

そうだ!

葉平は突然根本的な問題に気付いた。

自分が無知だったからこそ、青雲道宗に入門できたのではないか?

そう考えると、葉平の気分は突然また明るくなった。

しばらくして。

葉平はまた腰を伸ばした。

そして視線は自然と一冊の秘籍に落ちた。

【三千六百仙竅妙法】

そのとき。

突然、清らかな声が響いた。

「小師弟、どうしてここに?」

それは女性の声だった。