青州古城の下。
黒衣の少年の眼差しは極めて静かだった。
彼は五百メートル離れた場所から、蘇長御を見つめていた。
五百メートル先。
蘇長御の視線も思わず黒衣の少年に向けられた。
彼の眼差しはより静かで、より冷淡で、少しの恐れも驚きもなかった。
まるでこの黒衣の少年が、ただの普通の人であるかのように。
人々の目には、蘇長御の達人としての気質が存分に表れていた。
部外者はもちろん、身内でさえも、この瞬間には思わず驚きを覚えた。
最も驚いていたのは、徐秋白だった。
実際、徐秋白も過激な人間ではなく、性格は温和で、そうでなければ李鈺とも付き合えなかっただろう。
ただ蘇長御と葉平に関して、徐秋白はこの二人には何か問題があると常々感じていた。
まず葉平は、自分は資質が鈍いと言い、数ヶ月の時間をかけてようやく四雷剣勢と天河剣勢を悟得しただけだと。
この言葉は作り過ぎていた。
蘇長御については、終始無言を貫いているものの、常に達人の気質を漂わせており、徐秋白をより一層憂鬱にさせた。
明らかに練気五層なのに、なぜわざわざ達人を装う必要があるのか?
もちろん、最も重要なのはある一点だった。
それは蘇長御と葉平が乗車する前は、霜兒お嬢様と寧兒お嬢様は、ほぼ終始彼と会話を交わしていたということだ。
しかし蘇長御と葉平が乗車してからは、二人の視線は完全に蘇長御と葉平に注がれるようになった。二人は言葉を交わさなかったが、少し注意を払えば、霜兒と寧兒が蘇長御と葉平に多少なりとも好意を持っていることは分かった。
これは徐秋白にとって耐え難いことだった。
彼は堂々たる離劍山莊の若旦那様で、どこへ行っても天才として扱われ、常に注目の的ではなかったか?
しかし蘇長御の前では、彼は本当に見劣りしてしまう。
だから徐秋白は苦しかった。彼は嫉妬していた、蘇長御に対して非常に嫉妬していた。しかしこの嫉妬心を口に出すことはできなかった。
君子の道に反するからだ。
ただ今、徐秋白は少し動揺していた。
なぜなら蘇長御の気質は、完全に作り物ではなく、天性のものだったからだ。これは偽装できるものではない。
だから徐秋白は本当に蘇長御が実力を隠しているのかどうか確信が持てなかった。
馬車の下で。
蘇長御は四雷剣宗の弟子の言葉を聞き終えた後、思わず前方に目を向けた。
一目見ただけで、ちょうどその黒衣の少年と目が合ってしまった。
蘇長御は何となく気まずくなった。
顔を上げただけで相手と目が合うとは思わなかった。
この視線の交差には、何となく挑発的な感じがあった。
蘇長御は目を伏せたかったが、そうすることはできなかった。もし目を伏せたり視線をそらしたりすれば、自分の度胸のなさを露呈することになるではないか?
蘇どのは何でも我慢できるが、他人に見下されることだけは我慢できない。
二人は長い間見つめ合った。
遠くで、黒衣の少年も少し好奇心を抱いていた。
彼は一目で蘇長御の修為境界を見抜いた。
練気五層。
しかし彼は境界修為など気にしない、彼は剣痴で、剣道だけを重んじる。剣道の造詣は修為とは関係ない。
ただ黒衣の少年を困惑させたのは、蘇長御の剣意が非常に弱く、弱すぎて感知できないほどだということだった。
理論上、蘇長御の剣道の造詣は極めて平凡なはずだが、問題は蘇長御が自分と目を合わせる勇気があったことだ。
この小さな視線の交差も、実際には剣勢の対峙であり、もし相手の剣道の造詣が自分より劣れば、思わず視線をそらしてしまうはずだ。
しかし蘇長御はそうしなかった。それどころか蘇長御の目に宿る淡々とした様子に、彼は更に驚かされた。
もし本当に普通の剣道修士なら、決してこのような表情を見せることはできない。
これは絶対に演技ではありえない。
なぜなら、誰もこれほど真に迫った演技はできないからだ。
しかし次の瞬間、黒衣の少年は突然表情を変えた。彼は極めて恐ろしい剣勢を感じ取った。この剣勢は雷のように、また奔流のように。
さらにこの恐ろしい剣勢は、あと一歩で剣意に凝縮されそうだった。
黒衣の少年は視線を移し、ある男に固定した。
その人物こそが、葉平だった。
葉平の年齢は黒衣の少年とそれほど変わらなかったが、その静かな眼差しの下には、とてつもない剣勢が潜んでいた。
強い!
強い!
いや、強いではない、極めて強い。
彼には感じ取れた。葉平から漏れ出る剣勢は、もう少しで剣意に凝縮されそうだった。
これは恐ろしい。
剣勢と剣意は全く異なる概念だ。
青州第一の剣道の達人である四季道人でさえ、三百歳の時に四雷剣意を凝縮させた。
彼は二百年以上の時間をかけて、ようやく四雷剣意を凝縮させたのだ。
しかし目の前の男は、二十歳そこそこの様子なのに、あと半歩で剣意を凝縮できそうな錯覚を与えた。
二十数年でこのレベルに達するとは、恐ろしい、恐ろしい、極めて恐ろしい。
自分でさえ、三歳から剣道の修練を始め、今まで十四年の時間をかけても、剣意の凝縮まではまだ丸々一歩及ばないというのに。
だから葉平は強い!
もし本当に戦うことになれば、黒衣の少年は自分に大きな勝算はないと感じた。
しかし瞬時に、黒衣の少年は笑った。
そう、彼は笑ったのだ。
目には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
彼が青州に来たのは、第一位を取るためでもなく、青州の剣修の面子を潰すためでもない。
自分より強い剣道修士を探すためだった。
彼は自分の剣道を磨きたかった。
だから自分より強い剣修を探す必要があった。強いだけでなく、年齢も自分とあまり離れていない者でなければ、まったく意味がない。
しかしここに十数日も滞在したが、彼より強い剣修には一人も出会えなかった。
彼は失望していた、極めて失望していた。
しかし今は失望していない。
彼は出会ったのだから。
ずっと待ち続けていた人に出会ったのだ。
待て!
突然、黒衣の少年は何かを思い出したかのように。
思わず蘇長御を見つめ直した。
葉平の剣勢を感じ取った。確かに若き剣道の強者だった。
しかし、剣道の強者と共にいる者が、並の者であるはずがない。
だが、蘇長御の剣勢を感じ取ることができない。
それは一つのことを証明している。
蘇長御の剣道の造詣が、自分が感知できないほど強いということだ。
そう、間違いない、それしか考えられない。
蘇長御こそが真の強者なのだ。
さもなければ、どうしてこのような気質を持ち得るのか?どうして自分と対峙する勇気があるのか?
思いが通じ合い、黒衣の少年の目には狂喜の色が更に濃くなった。
この時、葉平との対決よりも、蘇長御との対決を望むようになっていた。
「私は無名剣士、青州に剣道を磨きに参りました。閣下、ご指導いただけませんでしょうか?」
少年の声が響いた。
これが彼の初めての発言であり、しかも自ら挑戦を申し出た。
たちまち、どよめきが起こった。
「やはりこの方は絶世の剣道の達人なのだな」
「そうだな、この黒衣の少年は二百戦以上も勝ち続け、青州の宗門すべてを物ともせずにいたが、この方の前では、かくも恭しい態度を示している。きっとこの方の剣勢を感じ取ったのだろう」
「ああ、その通りだ。真の剣道の達人は、剣を振るわずとも体内に剣勢を宿している。二人の剣道の達人が向かい合えば、剣を交えずとも優劣が分かるものだ。黒衣の少年は相手の剣勢を感じ取ったに違いない」
「ふむ!私もこの馬車が現れた時、強大な剣勢を感じ取っていたが、この方だったのか」
「???兄貴、無理に格好つけないでくれよ。お前に剣勢なんか感じ取れるわけないだろ。毛一本感じ取れたら御の字だぜ、毛だぞ、分かるか?」
群衆の議論の中、多くの人々が蘇長御を絶世の高人だと感じ始めていた。
そして遠くでは。
蘇長御は黒衣の少年の挑戦を聞いて、完全に呆然としていた。
まさか?たった一目見ただけで、自ら挑戦してくるとは?
私が練気五層の無能だということが分からないのか?
私の傍らにいる小師弟の剣勢も感じ取れないのか?
これで剣道の達人と言えるのか?
小師弟が傍にいるのに挑戦せず、なぜ私に挑戦する?
柔らかい柿を狙っているのか?
蘇長御は少し呆然としていた。
黒衣の少年の挑戦により、蘇長御は進退両難の状況に陥った。
挑戦を断れば、それこそ終わりだ。
李鈺や周りの修士に軽蔑されるだけでなく、小師弟までも自分を無能だと思うだろう。
かといって挑戦を受ければ、もっと早く終わる。
蘇長御は自分で日陰の場所を見つけて横たわった方がましだ、死体が腐って他人に迷惑をかけないように。
蘇長御が断ろうとした時。
葉平の声が突然響いた。
「大師兄、あなたの剣術は高超です。この者と戦えば、勝っても武を以て勝ったとは言えません。この戦い、私に任せていただけませんか?」
葉平の声が突然響いた。
彼には分かっていた。蘇長御がこの者を全く恐れていないこと、そして返事を躊躇している理由も単純なものだった。
なぜなら......この黒衣の少年は、大師兄の剣に値しないからだ。
そう、その通りだ。
大師兄は絶世の剣道の達人なのだ。どうして誰彼構わず戦うことができようか?
蘇長御の剣は、絶世の剣道の達人とのみ戦う。
このような並の者と戦えば、勝っても武を以て勝ったとは言えず、負ければ......まあ、負けることなどありえない。
これを理解した葉平は、自ら戦いを申し出たのだ。
小師弟が自分の代わりに戦ってくれると聞いて。
蘇長御は心の中で大いに喜んだ。
この考えはいい。
とてもいい、まさにこれだ。
格好つけるのは私に任せて。
戦うのはお前に任せる。
分担が明確で、とてもいい、非常にいい。
蘇長御は心の中で大喜びした。
すぐさま、彼は口を開こうとした。
確かにその通りだ、この戦いは師弟お前に任せよう、これも一つの修練となるだろう。
しかし、言葉は用意していたものの。
口を開くと、台詞が変わっていた。
「若さゆえの気負いは悪いことではない。だが、あまりに鋭い剣鋒は良くない。師弟よ、よく見ておけ、これが真の剣道だ」
声が響き渡った。
たちまち、千の波が立った。
誰もが予想していなかった。
蘇長御が......本当に戦いを受けたのだ。
そして、この言葉はさらに人々を震撼させた。
真の......剣道とは?
この瞬間、数万の修士たちは目を輝かせた。
この一戦を期待して。
なぜなら、蘇長御の言葉は、究極の格好つけだったからだ。
そして蘇長御はこの言葉を言い終えた後。
完全に呆然としていた。