「昔、私が中央大陸を遊歴していた時、名を轟かせていたのだが、誰かが私の精力増強の効果を広めてしまい、問道宗に避難せざるを得なくなってしまった。そうでなければ、今でも遊歴を続けていただろう」
「私と一緒に遊歴していた者は、人族でも有名な大能者で、古月居士と呼ばれていた。彼が私を問道宗に送り届けた時、自分の著書に私のことを書いて、世の人々に覚えてもらうと言っていた」
古月居士は中央大陸の有名な旅人で、遊歴と冒険を好み、中央大陸、妖域、仏国……と、至る所に足跡を残し、各地に彼の伝説が残されている。
伝説によると、彼は大夏王朝で史官を務め、夏帝の民間での艶聞や、私生児の数を詳細に記録したという。
妖域では竜の国の姫に攫われ、強制的に結婚させられそうになった時に逃亡し、仏国まで追われたという。
仏国では僧侶を装って詐欺を働き、論理的な矛盾を指摘されたり答えられない質問をされたりすると、「仏は説くべからず」と言い逃れ、この言葉は後に仏国で広く伝わったという。
古月居士は自身の見聞を書物にまとめ、修仙界で非常に人気を博した。
古書には古月居士の修為について明確な記載はないが、陸陽が考えるに相当高いはずだった——修為が少しでも低ければ、とっくに打ち殺されていただろう。
人參童子は素晴らしい教師で、語る多くの事は自身の経験した昔話であり、さらに藥園の数種の薬草は水月居士との遊歴で発見したものだという。陸陽は首を振りながら、興味深く聞き入っていた。
人と人參が花と草で作られた小屋に近づくと、その中に含まれる実質化した生命力を強く感じ、陸陽は身震いした。
「おかしい!」陸陽は胸を押さえ、体が制御不能に震え始めた。
ドクドクドクドク……陸陽の心臓の鼓動は加速し、耳元で無数の小虫が飛び回るような、ブンブンという音が止まなかった。
注意深く聞いてみると、陸陽は背筋が凍る思いをした。それは小虫の音などではなく、体内で無数の人々が話す声だった!
それらの声は、自分たちが体内に閉じ込められていて、出たい、出たいと言っていた……
人參童子が最初に陸陽の異変に気付き、大声で叫んだ。「おい、おい、おい、外の人が来たぞ、お前ら気をつけろ、生命力を収めろ、早く!」
陸陽は功法を運転し、沸騰する血液を鎮めると、声は徐々に消えていった。