王傾辭の去っていく背中を見つめながら、楚語琴は深い思考に沈んだ。
九級武士?辰ちゃんの下女だと?
もし路辰が今大夏王朝の皇太子なら、九級の下女がいても楚語琴は少しも不思議に思わなかっただろう。皇太子には実権があるのだから。
しかし路辰は外から見れば、勉強もせず、放蕩無度な廃物だった。
この王傾辭がなぜ進んで彼の下女になろうとするのか?
もしかして王傾辭の背後にいる勢力が、辰ちゃんの偽装に気付いているのか?
あるいは辰ちゃんの背後の勢力こそが、王傾辭の背後の勢力なのか?
そのとき、楚語琴は路辰の部屋の前に来た。彼女は路辰に注意を促す必要があると考えた。
ちょうど路辰が部屋から出てきて、楚語琴の表情が少し厳しいのを見て、好奇心から尋ねた。「楚おばさん、何か用事?」
楚語琴は尋ねた。「辰ちゃん、あの王傾辭はあなたを支援している勢力の者なの?」
この質問を聞いて、路辰は困惑した表情を浮かべた。どんな支援勢力?
楚おばさんは自分の背後に何か勢力があると思っているのか?
路辰は少し考えた。最近の自分の振る舞いがあまりにも異常だった上に、デザートイーグルやバトラーといった時代を超えた現代の銃器を出したことで、楚語琴に自分の背後に強大な勢力があると思わせてしまったのだろう。
そう考えて、路辰は笑いながら言った。「楚おばさん、どうしてそれを?」
システムのことは絶対に話せないが、楚語琴を安心させるために、路辰は嘘をつくことにした。
楚語琴はため息をつき、そして言った。「辰ちゃん、あの女は単純な人物ではないわ。彼女は九級武士よ。
「あなたのことにあまり干渉したくないけど、あなたの身の安全に関わることだから、おばさんは警告しておきたいの。」
「あなたを支援している勢力には、きっと大きな企みがあるはず。今のところ彼らの目的は分からないけど、あなたは彼らに振り回されないように。」
「もし都のあの位を望むなら、おばさんに言って。私があなたの外祖父に伝えるわ。そうすれば外祖父も楚家もあなたの味方になる。素性の分からない勢力に頼る必要なんてないのよ。」
楚家は本来路辰を見捨てるつもりはなかったが、路辰があまりにも手に負えず、今では北郡という辺境の地に追いやられてしまったため、楚家も他の候補を考えざるを得なくなっていた。