第64章 それは30万の大軍だぞ

夜が訪れると、路辰は書斎に籠もり、大夏の地図、特に北郡の地形を繰り返し確認していた。

地図は兵士たちの手書きではあったが、それなりの参考価値はあった。

路辰は、りゅうだんほうの効果を最大限に発揮させるには、蠻族の三十万騎兵を狭い地形に誘い込むのが最善だと考えていた。

そして「袋詰め」作戦を実行すれば、蠻族の騎兵は逃げ場を失うことになる。

もちろん、今の計画は机上の空論に過ぎず、実際の実行は並大抵の困難ではないだろう。

例えば、蠻族が罠にかかるかどうか、彼らの思考通りに動くかどうかは、すべて蠻族の統率将軍次第だった。

そのとき、書斎のドアをノックする音が聞こえた。

「辰ちゃん、入ってもいい?」

楚語琴の声を聞いて、路辰は心ここにあらずといった様子で答えた。「ああ、どうぞ。」

楚語琴が書斎に入ると、路辰の目が机の上の地図に釘付けになっているのが見えた。秦玉山との面会後ずっと書斎に閉じこもっていることから、楚語琴は何か重大な危機が迫っていることを悟った。

楚語琴は心配そうに尋ねた。「辰ちゃん、何があったの?」

楚語琴は他人ではないので、路辰も隠すつもりはなかった。そこで答えた。「蠻族の王庭が召集令を出して、三十万の軍を集めて南下し、北郡を占領して、そこに建国するつもりだ。そして雁の都を彼らの都にするという。」

その言葉を聞いて、楚語琴の頭が一瞬停止した。

この世界では、大規模な戦争は一人の宗師や数人の強者で左右できるものではない。

三十万の騎兵が南下すれば、北郡のわずかな人数では守りきれないのは明らかだった。路辰が今夜、食事も喉を通らず、ずっと書斎にこもっているのも無理はない。

楚語琴はこのとき尋ねた。「辰ちゃん、その情報は確かなの?」

路辰はうなずいた。「錦衣衛が草原から送ってきた情報だ。」

楚語琴は沈黙した。

血月樓が路辰を暗殺しようとした時でさえ、彼女は路辰を守れなかった。まして三十万の騎兵から王府を守ることなど、なおさらできるはずがない。

楚語琴にも、これは自分が介入できる問題ではないことは分かっていた。

路辰はこのとき言った。「楚おばさん、紫萱たちを安平城に移すつもりだ。そして私は三万の軍を率いて雁の都で蠻族騎兵と決戦を行う。」

安平城も北郡の城だが、より南に位置している。