第77章 軍拡令

右大臣趙文翰の言葉を聞いた後、左大臣林高遠は冷笑して言った。「確かに辺境の藩王様には外敵の侵入を防ぐ責務がありますが、北郡にはたった三万の兵しかおりません。趙大臣は、北王様がこの三万の兵で蠻族の侵入を撃退できるとでも?」

趙文翰はすぐに答えた。「私はそのようなことは申しておりません」

そう言いながら、趙文翰は龍座に座る夏帝を見つめ、続けて言った。「陛下、北郡は蠻族に対する最前線でございます。通常の三万の兵では既に蠻族の侵入を防ぐには不十分です。臣は、今こそ北郡に軍拡令を下すべき時だと考えております」

趙文翰のこの言葉に、朝廷は瞬く間に議論が沸き起こった。

夏帝が即位して以来、藩王様の反乱を防ぐため、兵力制限令を下していた。

藩王様の封地内では、土地の面積に応じて、兵士の数に上限が設けられていた。

北郡の軍隊の上限は五万人であり、これが路辰が新軍を募集する際に一万人しか募集しなかった理由でもあった。

趙文翰の言葉は一見問題なく見える。確かに北郡は蠻族に対する最前線であり、北王様により多くの兵士の枠を与えるのは当然のことだった。

しかし……

一度この前例を作れば、他の辺境の藩王様も同じ口実で軍拡を要求してくるだろう。

蠻族への対抗は外敵の侵入を防ぐためだが、大夏王朝の他の方角にも数つの大きな王朝があった。これらの王朝とは長年戦争は起きていないものの、いつ攻めてくるかわからない。

北郡が軍拡すれば、他の辺境の藩王様も必ず軍拡を要求するだろう。

これは明らかに連鎖反応を引き起こすことになる。

そして北郡が一旦軍拡すれば、他の王朝が突然大夏を攻撃してくる可能性もある。

藩王様が皆従順というわけではない。外敵と結託し、それを取引材料として朝廷に軍拡令を要求する可能性も否定できない。

夏帝は愚かではなく、北郡に軍拡令を下した後の結果も十分理解していた。

しかし、この時夏帝は口を開いた。「勅令を下す。北郡は蠻族侵入に対する最前線であり、北郡の三万の兵では蠻族の侵入に対応するには不十分である。今日より、北郡の兵士の上限を十五万に引き上げる。また、北王様は北郡の封地の藩王様として、いかなる事態が発生しても戦場から逃げることは許されず、必ず北郡を死守せよ!」

この言葉を聞いた趙文翰は直ちに拱手して言った。「陛下の英明なる判断でございます!」