第5章 神秘な石符

「これは何だ?」

林動は困惑した表情で手の中のものを見つめていた。それは二本の指ほどの大きさの石のように見えた。石は淡い灰白色をしていたが、手で触れると不思議な柔らかさを感じた。その感触は石質ではないようだが、玉でもなく、木でもないようだった。

石のようで石ではなく、玉のようで玉ではなく、木のようで木でもない。

これが林動が苦労して洞窟の頂上まで登り、そこにある隠れた裂け目から見つけ出したものだった。先ほどの液体が滴り落ちていた場所の源は、おそらくこれだったのだろう。

この物が嵌め込まれていた山頂の暗がりには、非常に鮮明な掌印が残されていた。その掌印は掌紋まではっきりと見えた。この不思議な掌印を見て、林動はようやく理解した。おそらくこの洞窟には、遥か昔に誰かが訪れていたのだろう。

「奇妙なものだ」

林動は呟いた。この親指大の石には、かすかに複雑な模様が見えた。それは不思議な符文のように見えた。

符文は石の隅々まで刻まれており、それは神秘的な石符のように見えた。

今この石符には、一目見ただけで深遠な意味を感じさせる符文以外には、特に変わった点はなかった。しかし林動は、先ほど見た赤い光点の液体が幻覚ではないことを確信していた。

「石の池があのような力を持っているのは、きっとこの石符のせいだろう...」

林動は幼い顔に思案の色を浮かべた。先ほど彼は光点が石の池に落ちるのを目撃していた。そしてそれこそが、なぜこの池がこのような不思議な効果を持っているのかを説明できる唯一の理由だった。

「カタッ!」

林動が考え込んでいる間、洞窟の外から突然石が転がる音が聞こえた。すぐさま彼は石符を内側の衣服のポケットに入れ、胸に当てて保管した。

「林動兄さん、ふふふ、やっぱりここにいたんだ」

林動が石符を収めた時、蝶のような姿が洞窟の入り口に現れた。それは十三、四歳ほどの少女で、薄い色の簡素な衣装を身につけていた。しかし、その簡素な衣装も、彼女の顔の機敏さを隠すことはできなかった。少女はまだ幼かったが、その小さな顔立ちは既に非常に整っており、大きな瞳をパチパチさせる様子は極めて愛らしかった。

少女を見て、林動は内心ほっとした。彼女は林家の者ではなく、柳妍が林動が生まれて間もない頃に雪の中から拾った赤ん坊だった。林動よりも少し年下で、二人は一緒に育ち、兄妹のような親密な関係だった。孤児だったため、彼女は林姓を名乗らず、柳妍が美しい名前をつけた。青檀という名前で、その人柄も名前の通り、檀香のように霊気に満ちていた。

「林動兄さん、もう日が暮れそうよ。お母さんが随分前から呼んでるわ」

青檀はにこにこしながら近づき、自然に林動の腕に手を回して外へ引っ張り出した。歩きながら不満そうに言った。「暗くなったら、ここの石の道も見えなくなるわ。この前みたいに洞窟で寝るつもりなの?」

傍らでヒバリのようにぺちゃくちゃと話す青檀を見て、林動も思わず微笑んだ。そして胸に手を当てると、そこに胸に当てて保管していた石符から、かすかな冷たさが伝わってきた。

この石符の来歴は分からなかったが、直感的にこれは並のものではないと林動は感じていた。

夜の帳が大地を覆い、清涼な月光が降り注ぎ、大地に残る余熱を洗い流していた。

部屋の中で、林動は目を閉じて眠っていた。月光が窓から差し込み、その一部が林動の体に当たっていた。突然、月光が水面のように揺らめき、奇妙な光景が現れ始めた。その清涼な月光が林動の胸の辺りに集まり始め、かすかな光を放っていた。光の中心には、古めかしい雰囲気を漂わせる石符が見えた。

石符が光を放ち始めた時、深い眠りに落ちていた林動の目が少し開いた。しかし、完全に目を開く前に、突然脳裏から目眩が襲ってきた。そして彼は恐ろしいことに、真っ暗な空間の中にいることに気付いた。

ここには光も無く、静寂で、そして冷たかった。

突然の出来事に、林動の心は恐怖に包まれた。どう考えても、彼はまだたった十四歳の子供に過ぎなかった。

「シュッ!」

林動が恐れている間、静寂な暗闇の中で微かな音が響いた。そして、一つの光影が突然彼の前に現れた。よく見ると、その光影は林動と瓜二つだった。ただし、後者の顔には生気が全くなく、無表情だった。

「これは一体どういうことだ...」

林動は目の前の自分そっくりの光影を呆然と見つめ、この不気味な光景に恐怖を感じていた。

「パッ!」

林動が呆然としている間に、その「林動」の光影が突然動き出した。その姿が揺らめき、両拳を繰り出すと、林動がよく知る拳法が繰り出された。

「これは...通背拳か?」

光影が繰り出す拳法を見つめ、林動は思わず目を見開いた。そして、目から深い驚きが溢れ出た。この光影が繰り出す通背拳は、林嘯のものよりもさらに流麗で……完璧だと気づいたのだ!

パパパパパパパパパ!

漆黒の空間の中で、光影は素早く動き、両拳を振るう様は、まるで猿が身を伸ばしているかのようだった。その感覚は、林嘯の時よりもさらに霊気に満ちていた。

九響の極み!

林動は、自分と瓜二つの光影を驚きの目で見つめながら、相手が通背拳を繰り出す際に、九つの澄んだ音を明確に聞き取った!

「九響か……」

林動は呟いた。しかし、その衝撃に震えている時、一連の拳法を終えたばかりの光影の体が突然奇妙に震え、その震えと共に、林動の腕から微かな鈍い音が伝わってきた!

「これは……」

この鈍い音は極めて微かで、この空間が静寂に包まれていることと、林動の精神が集中していなければ、恐らくこの音は全く聞こえなかっただろう。

十響!

林動は呆然と光影を見つめた。本来九響の極みしかない通背拳が、その手にかかると第十響まで出せるというのか?!

林動は確信を持って言えた。この第十響は、恐らく父親の林嘯でさえ、繰り出すことはできないだろうと。

「これは一体どういうことだ?」

林動は呆然とした状態に陥り、しばらくしてようやく我に返った。眉をひそめて深く考え込んだ。たった一度見ただけだったが、林動には不思議な感覚があった。この光影が繰り出す通背拳は、林嘯が昼間に見せたものよりも、さらに自然で生き生きとしている、というか、完璧だった。

しかし、なぜこの光影がこのような特別な能力を持っているのか、それは林動には理解できなかった。ただし、漠然とではあるが、今回は宝物に出会ったのかもしれないと理解していた……

林動の心の中で思いが巡る間、一連の拳法を終えた光影は消えることなく、再び身を動かし始め、同じ通背拳を最初から繰り出し始めた。

猿のように機敏な姿を見つめながら、林動は我を忘れかけていた。最初の恐怖はいつの間にか消え去り、全神経を集中して、その機敏な光影を見つめた。幼い顔には深い思索の色が濃くなり、光影の拳の型を何度も何度も観察し、わずかな弧線の動きまで細かく脳裏に刻み込んでいった。

長い時間観察した後、林動はついに両足を開き、構えを取り、光影を真似て、ゆっくりと通背拳を繰り出し始めた。

「パッ!」

漆黒の空間の中で、二つの同じような人影と光影が、疲れを知らずに何度も何度も拳法を繰り出し続けた。パパパという音が絶え間なく響いていたが、そのほとんどは光影のものだった。

この状況に対して、林動は気落ちすることなく、幼い顔には真剣な表情を浮かべ、拳法を繰り出しながら、知らず知らずのうちに光影の拳式に従って微調整を加えていった。

この変化は微細なものだったが、まるで画龍点睛のような効果があった。小さな調整が、予想外の収穫をもたらしたのだ。

「パッ!パッ!パッ!パッ!」

拳と掌を伸ばし、腕は猿のように機敏に動き、四つの鋭い音が連続して響き、林動の拳風も、この時風を切る音を立て始めた!

四響!

林動の両目は、この時異常に輝きを増した。わずかな調整だけで、この通背拳の修行がこれほどまでに自在になるとは思いもよらなかった!

その感覚は、まるで比類なき名師が手取り足取り教えてくれているかのようで、しかもこの師の水準は、恐ろしいほどの高みに達していた。

この収穫は、林動の心を狂喜で満たした。もし林嘯が、彼がたった一日で通背拳を四響まで修得できたことを知ったら、驚きのあまり顎が外れてしまうだろう。彼自身はかつて一ヶ月近くかかってようやくこのレベルに達したのに、林動は彼の何十倍もの速さで上達したのだから!

このような収穫を得て、林動の精神はさらに旺盛になったかのようだった。休むどころか、再び拳式を展開し、何度も何度も通背拳を繰り出し、自分の拳法を光影のものと同じにしようと懸命に努力した……

漆黒の空間の中では、時間の流れが止まったかのようだった。林動はこうして光影を真似続け、この汗水流す努力の下で、彼の拳法は光影のものにどんどん近づいていった。

漆黒の空間で、光影と人影が閃き、まるで二匹の霊性豊かな猿のように、拳と掌を伸ばすたびに、風を切る音が響いた。