突然の声に、試練館は一瞬静まり返り、次いで驚きの視線が一斉に林動に注がれた。
「動ちゃん、何をするんだ?」
傍らの林嘯も、林動の行動に一瞬戸惑い、急いで声をかけた。今日の林動の活躍は予想以上だったが、林宏と比べるとまだ差があることは否めない。淬體第六段と九響通背拳だけでは、すでに第七段に達している林宏には勝てるはずがない!
「林動兄さん、行かないで!」
我に返った青檀は、小さな顔に焦りの色を浮かべた。彼女は、林動の突然の行動が自分に関係していることを知っていた。
「心配するな、父さん。林宏兄さんと切磋琢磨したいだけだ。負けたとしても恥ずかしいことじゃない...」林動は笑いながら言った。
それを聞いて、林嘯はようやく我に返り、躊躇いながらも頷いて言った。「では、気をつけろよ。」
林動は頷き、青檀の頭を軽く叩いてから、多くの視線を浴びながら場内に入っていった。振り返った時、その瞳に冷笑が走った。もし林宏が大人しく一位を取っていれば、彼もそこまで実力を見せる必要はなかったのだが、残念ながら、この男は一位を取っただけでは飽き足らず、さらに図に乗ろうとしている!
「そうなら、お前が口も利けなくなるまで叩きのめすしかないな...」
林動は石臺の前で足を止め、席に座る林震天に向かって笑いながら言った。「お爺さん、切磋琢磨の挑戦を申し込んでもよろしいでしょうか?」
林震天も我に返り、驚きの目で林動を見つめた。林宏の実力を目の当たりにした後でも、林動がなお切磋琢磨を申し出るとは、自ら苦しみを求めるのでなければ、何かしらの自信があるということだろう。
「何か見落としていたようだな...」
林震天の両目の奥に、突然かすかな期待が湧き上がった。何年も前の族の比べ合いで、林嘯がこのように頭角を現し、宗族への帰還の希望を見せてくれた...果たして林動は、かつての林嘯のように、再び彼に大きな驚きを与えてくれるだろうか?
「通常の条件であれば、もちろん構わない。」
林震天の承諾を得て、林動はようやく微笑んだ。
「お前という奴は、わざわざ自分から殴られに来るのか。今の林宏は私でさえ手に負えないぞ。」林霞は石臺に向かう林動に駆け寄り、怒った声で言った。
「今は威張る時じゃない。」
呆れた表情の林霞を見て、林動は微笑むだけで何も言わず、身を躍らせて石臺に上がった。そこでは、林宏が両腕を組んで、冷笑いを浮かべながら彼を見つめていた。
「林動、ベスト3に入っただけで、自信過剰になったようだな?」林宏は目の前の林動を見て、皮肉めいた笑みを浮かべながら言った。
「だから林宏兄さんに目を覚まさせていただきたいと思いまして。」林宏の言葉の皮肉に気付かないふりをして、林動も微笑みながら答えた。
「当然だ。」林宏は退屈そうに言った。
「おじさん、始めましょうか?」林動は彼を一瞥し、台下のリンカーンに向かって言った。
「お前...」リンカーンは口を開きかけたが、最後は仕方なく溜息をつき、手を振って「試合開始」と告げた。
リンカーンの声が落ちると同時に、林宏の退屈そうな表情も冷たいものに変わった。その体表には淡い光が漂い始め、この様子では手加減するつもりはないようだった...
「林動、今から俺たちの間にどれほどの差があるか、教えてやろう!」
元氣力が経脈の中を巡り、波状の力が林宏の体中に伝わっていく。彼は林動に向かって冷笑い一つ浮かべ、そして二歩跳んで相手の前に現れ、鋭い掌風を林動に向かって重々しく打ち出した。
林宏の強力な掌風に対し、林動は意外にも全く回避の様子を見せなかった。この光景を見て、多くの人々は密かに首を振った。どうやらこの試合は、すぐに決着がつきそうだ...
「へへ、自分から苦しみを求める奴め、よくも挑戦なんかできたものだ。」
場外では、林山が他人の不幸を喜ぶように笑い、傍らの林蟒も軽く笑みを浮かべ、悠然と椅子に寄りかかりながら、杯の茶を一口ずつ啜っていた。
「バン!」
鋭い掌風が瞬く間に林動の胸前に迫った。しかし、その掌風が落ちようとした瞬間、林動もついに動きを見せた。彼も右手を伸ばし、直接林宏の掌風と衝突させた。
双方の掌が衝突した時、人々が予想した敗北の様子は現れず、むしろ驚くべきことに、林動の体は鉄塔のようにびくともしなかった。まるで林宏の一撃が、彼の体を揺るがすことができないかのようだった。
「どうしてこんなことが?」
この光景に、多くの人々が信じられない思いを抱いた。林宏の淬體七段の力で、なぜ林動の淬體六段を揺るがすことができないのか?
驚いたのは観衆だけではなく、林宏自身も表情を変えた。彼の感覚では、林動の掌が厚い壁のように感じられ、突破することができなかった。
この瞬間、彼は不吉な予感を覚えた。
「お前だけが、體錬第七重というわけじゃない!」
林動は表情を変えた林宏を見つめ、一字一句はっきりと言った。そして彼の言葉と共に、彼の体からも淡い光が漂い始めた。それは元氣力の波動であり、しかもその波動は林宏のものと比べても、決して劣らないどころか、むしろ強かった!
體錬第七重!
「シーッ...」
林動の体から放たれる元氣力の光を見て、試練館の中に突然、息を呑む音が響き渡った。なんと、林動の真の実力は第六段ではなく、第七段だったのだ!
なるほど、だから彼は林宏に挑戦する勇気があったのか。そういう実力があったからこそ!
「このやんちゃな...」
林嘯は石臺上の姿を呆然と見つめ、その表情は非常に複雑なものとなった。先ほどの林動からの驚きがまだ完全に消化しきれていないのに、今また重大な衝撃を受けることになった...
石臺下の林霞も、玉手で思わず口を覆い、瞳には驚きの色が満ちていた。
「第七段だろうが、何だというんだ?!」
林宏は表情を変え、最後には冷笑いを一つ浮かべ、腕を震わせて両掌を突然振り出した。剛猛な風が刃物のように、人の肌を切り裂くように痛かった。
「八荒掌法か。」
林宏の迫り来る掌風を見て、林動は微笑むだけだった。両掌を振り、直接巧みな弧を描いて林宏の掌影を通り抜け、その両腕を打った。彼のこの一見何気ない軽い打ちの下で、林宏の剛猛な八荒掌法の力は、まるで分散されたかのように、たちまち弱まった。
「八荒掌法は、そんな使い方じゃないぞ!」
林宏の掌風を打ち散らした林動は軽く笑い、その両掌を刃のように激しく突き出した。すると破風音が響き、その剛猛な力は、林宏が繰り出した八荒掌法と比べものにならないほど強大だった。
「お前も八荒掌法を知っているのか?!」
林動の見覚えのある掌法を見て、林宏は思わず声を上げた。しかしその声が落ちるや否や、彼は何か違いに気付いた。林動の八荒掌法の威力は、自分が繰り出す時と比べて、はるかに強大なようだった。
「そんなはずがない?!」
この発見に、林宏の顔色は青ざめ始めた。彼は八荒掌法を半年も修行してきたのに、なぜ林動に及ばないのか?
「信じられるか!」
顔色を失いながらも、林宏の目に凶光が走った。八荒掌法を極限まで繰り出し、体内の元氣力も狂ったように掌へと集中させ、最後の一掌を怒りをもって林動に向かって切り下ろした!
その鋭い掌風の下には、うなり声が響き、人々を震撼させた。
しかし林宏の必死の反撃に対し、林動は相変わらず落ち着いていた。刃のように剛猛な掌風が突然変化し、柔らかさを帯び始め、そして林宏の振り下ろす掌に粘りついた。
粘りついた瞬間、林動の腕が不思議な震えを見せ、その極めて剛猛な力が、潮のように一瞬のうちに爆発した。
「バン!」
剛猛な力が放たれ、人々は林宏の体が切れた凧のように吹き飛ばされるのを目にした。最後は足を踏み外し、みっともなく石臺から転げ落ちた...
林宏が台から落ちた時、試練館の中は再び静まり返った。誰も、今回の族比べで一位と目されていた林宏が、林動の手にかかってこれほどあっさりと敗れるとは想像もできなかった...
「よし...よくやった...」
林震天は石臺上の少年を呆然と見つめ、しばらくしてからゆっくりと腰を下ろし、つぶやきながら、その目には抑えきれない興奮と喜びが溢れていた。