第35章 初めての対決
「ドン！」
低い音が、両拳がぶつかり合う時に鈍く響き渡り、強烈な気の衝撃が、近くの地面の埃を全て巻き上げた。
両拳が衝突し、皆が予想していた惨敗は起こらなかった。林動の体は、岩のように地面にしっかりと根を下ろし、體錬第九重の実力を持つ雷力の一撃に対して、なんと受け止めることができたのだ。
「ドンドン！」
両者の拳が触れ合うや否や、二つの影が後ずさりした。雷力は二歩、林動は三歩下がった。全体的に見て、雷力の一撃は皆が想像していたような効果を上げることはできなかった。
「まさか受け止められるとは……」
雷力と互角に渡り合った林動を見て、謝家や林家の若い者たちの目に驚きの色が浮かんだ。雷力は青陽町で名の通った存在で、多くの者の推測によれば、この男はせいぜいあと半年で體錬九重を突破し、地元の境に到達するだろうと言われていた。その時には、雷家の実力は更に上がることになるはずだった。
青陽町の若い世代の中で、雷力は間違いなく第一人者だった。しかし今日、その所謂第一人者が、林家のより若い世代に阻まれたのだ。これは多くの人々の目を疑わせるものだった。
謝盈盈と謝婷の表情も、この時同じように変化した。前者の目にはより深刻な色が浮かんでいた。最近林家で頭角を現してきた林動には、確かに本物の実力があるようだ。
謝盈盈は瞳を僅かに動かし、すぐに落ち着きを取り戻した。先ほど林動が雷力の一撃を受け止めたのは確かに意外だったが、だからといって、彼に雷力と対等に渡り合う資格があるというわけではない。
どう考えても、雷力は體錬第九重の実力を持っており、これは林動の體錬第八重をはるかに上回っている。そして先ほどの交手で、林動は武學を使用したが、雷力はまだ使っていなかったのだ！
だから、本気で戦えば、林動の敗北は必然だろう。
「通背拳九響の極みか？なかなかだ……」
後退した雷力は、少し驚いた様子で林動を見つめ、そして軽く笑みを浮かべ、両手を軽く曲げた。「なぜそれほど傲慢だったのか分かったよ。少しは実力があるようだな。だが、これからは、そんな幸運は続かないだろう……」
言葉が落ちると、雷力の手の爪に濃密な光沢が現れ、元氣力の波動も広がっていった。この様子では、彼もまた武學を使用して戦うつもりのようだった。
雷力のこの行動を見て、先ほどまで林動の活躍に喜色を浮かべていた林霞たちの表情から、喜びの色が消えた。この様子では、雷力が本気を出すつもりのようだった。
林動は表情を平静に保っていた。八重と九重の間には確かに大きな差があり、先ほど通背拳第十響を繰り出しても、雷力と互角に渡り合えただけだった。そして相手も明らかに武學を修行しており、雷家の底力からすれば、武學のランクもかなり高いはずだ。本気で戦えば、相手の勝算の方が高くなるだろう。
もちろん、林動にも自信はあった。たとえ雷力が勝ったとしても、それは惨勝に終わるはずだ！
「フッ……」
林動は深く息を吐き、十本の指をゆっくりと動かした。彼は先ほど習得したばかりの奇門印を全力で繰り出した場合、どれほどの威力を発揮できるのか試してみたかった。確かに奇門印第一重は、林嘯や林震天たちには見向きもされなかったが、林動の奇門印第一重は石符光影によって完全なものとなっており、その威力は当然、彼らが使用する時よりも強力なはずだった。
場内で再び緊張が高まる雰囲気を見て、さらに多くの人々が集まってきた。彼らは興味深そうに二人の対峙を見守っていた。最近林家で頭角を現してきたこの天才が、雷力のような名の通った若き天才に挑戦する資格があるのかどうか、彼らも知りたがっていた……
雷力は掌を軽く曲げ、林動を見つめる目に次第に鋭さが増していった。雷家は青陽町で最も底力のある勢力であり、そのため林家のような新参者兼成り上がり者の勢力に対しては、心の中で軽蔑の念を抱いていた。今日、林動が公の場で自分と戦うというのなら、彼を完全に打ち負かさなければ、自分の青陽町若い世代第一人者という名声が笑い物になってしまうだろう。
「へへへ、ここは本当に賑やかだな……」
しかし、雷力が体内の元氣力を巡らせ始めた時、不協和音のような笑い声が突然響き渡り、十数人の影が横の楼閣から飛び降りて、真っ直ぐに場内に入ってきた。
現れた十数人も、年齢はおよそ十六、七歳の少年たちで、皆同じ衣装を着ていた。衣装の胸元には紋章があり、そこには狂風のように舞う大刀が刺繍されていた。
「狂刀武館だ」
これらの人々を見て、林動は少し驚いた。その紋章から彼らの身分を見分けることができた。まさに青陽町で、雷謝兩家と並び立つ狂刀武館だった。
その傲慢さを全身に漂わせる少年たちの最前列には、やや痩せ型の少年がいた。少年の両手は異常なほど大きく、その上には胼胝が一面に広がっていた。明らかに日頃の刀の練習によるものだった。この時、この少年は最初に雷力を横目で見て、それから笑みを浮かべながら林動に親指を立て、笑いながら言った。「お前が林家の林動か？度胸があるな、いいぞ」
「吳雲、これは俺と彼の間の問題だ。余計な口を出すな！」雷力はその笑みを浮かべた少年を見て、表情を曇らせ、叫んだ。
「余計な口を出さなければ、この青陽町をお前たちの庭にでもするつもりか？」吳雲は目を転がし、嘲笑うように笑った。この様子では、彼も明らかに雷力たちとは非常に仲が悪いようだった。
「へへへ、雷力、お前がそんなに戦いたいなら、俺が相手になってやろうか？」笑い声が落ちると、吳雲の目が突然熱を帯びて雷力を見つめ、舌なめずりをしながら言った。
この言葉を聞いて、雷力の表情が再び曇った。彼は吳雲に勝てないわけではないが、この男はいつも無頼漢として知られており、しかも戦いを命のように好む。一度戦い始めると、きりがなく、まるで狂人のようだった。だから彼でさえ、普通なら、この男と戦いたくはなかった。
「吳雲、雷力兄さまはただお前と争いたくないだけよ。理不尽な振る舞い、それがお前たち狂刀武館のやり方なの？」謝盈盈は冷ややかに言った。
「狂刀武館のやり方かどうかは知らないが、これが確かに俺のやり方だ。お前に意見があるなら言ってもいいが、俺が受け入れることは絶対にないがな」謝盈盈の言葉の中の嘲りに対して、吳雲は非常に真面目に頷きながら言った。
謝盈盈は真珠のような歯で紅い唇を噛み、頬が少し青ざめた。今日は本当に何もかもが上手くいかない。最初は言葉の鋭い、情け容赦のない林動に出会い、今度は無頼漢のような人物に出会う。これは彼女の心の中にも怒りの炎を燃え上がらせた。
林動は吳雲の返答を聞いて、思わず笑みを浮かべた。この少し滑稽な話し方をする男に好感を持ち始めていた。
雷力も顔をひきつらせ、表情は少し陰鬱になった。
「まあまあ、お前たち若者よ、もう十分騒いだだろう。それぞれ帰ったらどうだ。ここはまだ商売をする場所なのだからな」
その剣戟を交えんばかりの雰囲気が吳雲によって乱された後、その楼閣の上から、諦めたような声が聞こえてきた。皆が顔を上げると、一人の中年の男が高みから彼らを見下ろしており、その後ろには屈強な男たちが従っていた。
「あれはこの取引坊會の管理人で、王勁という。地元境の高手だ」林霞は林動の後ろで言った。彼女の心もこの時ほっと安堵した。この人物が出てきたからには、この騒動も終わりを迎えるだろう。
王勁が姿を現したのを見て、雷力も眉をひそめ、今日はスムーズに戦うことができないと悟った。すぐに掌の元氣力の波動を消し、林動を一瞥して冷ややかに言った。「今日はお前の運がよかったな。だが安心するな。狩りの時が来たら、その時は特別に"面倒"を見てやる。婷児のあの平手打ち、俺が取り返してやると言ったからには、覚悟しておけよ……」
「それと、吳雲、狩りの時には、お前にも思う存分戦わせてやる。その時は、逃げるなよ……」
言葉が落ちると、雷力は冷笑を一つ浮かべ、謝盈盈たちを連れて立ち去った。この期間に、彼が地元境に突破できれば、その時は林動と吳雲が一緒に来ても、片手で解決できるはずだ。
雷力の遠ざかる背中を見つめながら、林動も目を細め、唇の端に軽い弧を描いた。狩りか、少し楽しみになってきたな……