赤い花が、岩の上に一輪だけ生えていた。その生命力に満ちた姿は、この乾燥した世界の中で、とりわけ奇異な存在感を放っていた。
林動は、その妖艶な赤い花を一瞥した。直感が告げていた。これは、ただの花ではないと。もっとも、これは当然のことだった。このような生命力の欠片もない場所で咲き誇る花は、それ自体が特異な存在であることを物語っていたのだから。
炎ちゃんは岩の下をゆっくりと歩き回り、時折その妖しい花に向かって低い唸り声を上げたが、近づく勇気はなかった。
林動は、まだ熱気を放つ岩の下に立ち、躊躇いがちにその妖艶な花を見つめていた。しばらくの逡巡の後、ついに歯を食いしばって岩を登り始めた。
「シュッシュッ!」
林動の手が岩に触れると、微かな音を立てた。丹田から冷たい元気力が急速に湧き出し、全身を覆い、高温による火傷を防いだ。
林動は素早く巨岩を登り切ると、頂上に人の頭ほどの大きさのブラックホールがあることに気付いた。そのブラックホールは地底まで続いているようで、異常な熱気を噴き出していた。
「なるほど、ここの陽剛の気は地底から噴き出しているのか...」
この光景を目にして林動は納得し、すぐにブラックホールの縁にある妖艶な花に目を向けた。
誰かに見られていることを感じたのか、その妖艶な花は突然揺れ始め、周りを漂う薄い霧が林動の体に絡みついてきた。
霧が体に絡みつくと同時に、林動の意識が朦朧とし始めた。極度の疲労と虚弱感が体内から湧き上がってきた。まるで体内の生命力が強制的に吸い取られているかのような感覚だった。
林動の意識が徐々に弱まっていく一方で、その不気味な赤い花は、ますます艶やかに輝きを増していった。
この突然の危機に直面し、林動は右手を震わせ、波動を放出した。頭部を取り巻いていた不気味な霧を完全に打ち散らすことに成功した。
霧が消えた瞬間、林動は我に返り、目の前の赤い花を恐怖の表情で見つめた。考える間もなく、急いで退こうとした。
しかし、その場を離れようとした時、右手の掌から再び奇妙な吸引力が発生した。しかもその吸引力の標的は、まさにその妖艶な花だった!
この強烈な吸引力の下、妖艶な花は地面から引き抜かれ、林動の驚愕の目の前で、まっすぐに彼の右手の掌に向かって飛んできた。
「シュッシュッ!」