第20章 男の約束

林亦は鍾水雨の後ろについて事務室へ向かった。

鍾水雨の横を歩きながら、林亦は自分の左手を見つめ、時折隣の鍾水雨に視線を向けた。

「さっきのは確かに霊気だった。今も体内でかすかに感じられる。ただし、霊気は非常に微弱だ。でも、なぜ彼女の体内に霊気が存在するのだろう」

林亦は不思議に思った。「仙武大陸での修行時は、霊気のほとんどは天地から吸収し、場所によって霊気の濃度も異なっていた。しかし地球では、周囲に霊気を全く感じられない。となると、あの霊気は彼女の体から発せられたものとしか考えられないが、鍾水雨はどこからこの霊気を得たのだろうか?」

林亦には理解できなかった。

「何を見ているの?」

鍾水雨が突然口を開いた。さっきから隣の林亦が自分を時々見ていることに気付いていた。その奇妙な眼差しに、鍾水雨は少し落ち着かない気持ちになっていた。

林亦は首を振った。「何でもありません。鍾先生、最近何か特別なものを食べましたか?」

「特別なもの?別に何も。どうしてそんなことを聞くの?」

鍾水雨は林亦の質問に興味を持ったが、林亦が黙っていたので、それ以上追及しなかった。

事務室に着くと、中には別の生物の教師が試験の採点をしていた。

鍾水雨は椅子を引いて林亦を座らせた。

林亦は座ったまま、鍾水雨の体を観察し続け、霊気の所在を探ろうとしたが、何も見つけられなかった。

林亦にじっと見られ続けた鍾水雨は、全身が落ち着かない様子だった。

授業の準備ノートを書いていた鍾水雨は顔を上げ、林亦を睨みつけて小声で言った。「なぜそんなに見つめるの?私の顔に何かついてる?」

「いいえ、ただ先生が今日着ているワンピースがとても似合っていて、いつもより綺麗だなと思って、つい見とれてしまいました」林亦は微笑みながら答えた。これは確かに本当のことだった。

鍾水雨は林亦の言葉を聞いても表情を変えなかったが、内心では嬉しく思っていた。「お世辞が上手ね。手の怪我は大丈夫?今夜、生物の補習をする予定だったけど、手が不自由なら、数日後に延期してもいいわよ」

「大丈夫です。この程度の怪我は何でもありません」

林亦は授業終了のチャイムが鳴るまで事務室にいて、その後教室に戻った。

道中、林亦は霊気のことばかり考えていたが、手掛かりは掴めなかった。