第19章 罰立ち

林亦が教室に着いた時、授業開始まであと30分あり、教室内の人はまだ少なかった。

陳萌は自分の席に座って、本を読んでいた。

林亦が彼女の机の横を通り過ぎたが、陳萌は林亦を一目も見なかった。

「昨日のことで陳萌は完全に私のことを嫌いになったようだ」

林亦は心の中でため息をついた。彼は陳萌と仲良くなりたいと思っていたが、それが叶わないなら無理強いはしないつもりだった。

林亦は自分の席に戻り、教科書を取り出した。

「昨夜、これまで遅れていた全ての科目の教科書に目を通したから、今日からは高校1年の数学の問題集から始めよう」

林亦は高校1年の数学の問題集を取り出し、開いて、ペンを取った。

「数学の問題は想像以上に難しいが、公式と異なる問題の解き方のコツを掴めば、すぐにブレイクスルーできるはずだ」

「30分で35問解いた。選択問題が20問、空欄埋めが10問、大問が5問で、正答率は70パーセント。この速度と正答率はまだまだ上げられる」

林亦は30分かけて書き込んだ数学の練習帳の数ページを満足げに見つめ、深いため息をついた。

ちょうどその時、1時間目の授業開始のチャイムが鳴った。

林亦は頭を下げたまま、問題を解き続けていた。

「林亦、この問題を前に出て解いてみなさい」

耳に聞き覚えのある声が響き、問題を解いていた林亦が顔を上げると、教壇に立って厳しい表情で自分を見つめている劉おやじの姿があった。

劉おやじは林亦をじっと見つめ、その目には何の感情も浮かんでいなかった。黒板には曲線方程式の問題が書かれていた。

既知の2点から、曲線方程式を求める問題だった。

クラス全員の視線が劉おやじの目線に従って、林亦の席に向けられた。

「昨日も林亦は劉おやじに立たされたのに、今日もまた災難に遭うみたいだな」

「林亦のやつすごいな、数学の授業中に居眠りするなんて」

「手はどうしたんだ?包帯巻いてるぞ?」

「昨日牛帆に殴られたんだろう。ざまあみろ。それに劉天宇も怒らせたみたいだし、今日はどんな目に遭わされるか」

前の席の生徒たちが私語を交わし、他人の不幸を喜ぶように、林亦が恥をかくのを待っていた。

陳萌は少し首を傾げ、後ろの席の林亦を見た。林亦の左手に包帯が巻かれているのを見て、美しい瞳が微かに揺れた。