第45章 三千山にて

机の前で、鍾水雨は真剣な表情を浮かべていた。

「昨日教えた要点をもう一度言ってみて」鍾水雨は必死に普通の声を装いながら、左手で教科書をめくり、目の前の林亦を睨みつけた。

林亦は頭を掻きながら、照れ笑いを浮かべた。「昨日は細胞を構成する元素と化合物について…」

林亦は昨日鍾水雨が教えた要点を一通り復唱した。鍾水雨は林亦が一言も欠かさず言い終えるのを聞いて、やっと表情が和らいだ。

「うん、じゃあ今日は新しい内容に進みましょう。しっかり覚えてね、明日また確認するから」

鍾水雨は教科書を開いた。今、林亦に教えているのは高校一年生の生物の内容だった。

そして林亦の記憶力と理解力を心配して、鍾水雨はゆっくりと丁寧に説明していた。

林亦はこれらの知識をすでに習得していたが、鍾水雨の説明を聞きながら、心の中で新たな復習をしていた。

授業モードに入った鍾水雨は、真剣な表情で、わかりやすく各要点を詳しく解説した。

一時間以上講義を続けた後、鍾水雨はようやく止めて時計を見た。「もう遅いわね。帰ってからこれらの要点をよく消化してね。わからないことがあったら、また聞きに来てください」

鍾水雨は椅子から立ち上がり、伸びをした。

まるで林亦の視線を警戒するかのように、わざと体を横に向けた。この小さな仕草に林亦は思わず苦笑した。

鍾水雨と別れ、林亦は帰り道を歩いていた。

「これで学校の男子たちの永遠の夢を叶えたことになるのかな」

「もし彼らが知ったら、女神様として崇拝している鍾先生が、こんな俺みたいなダメ人間と近距離で接触していたなんて、どれだけの憎しみを買うことになるだろう」林亦は首を振った。

今はもう夜の7時過ぎで、明海花園に向かう道を歩いていると、家に着いたときには7時半になっていた。

陳家の別荘の中では、明かりが灯っていた。林亦はインターホンを押した。

「誰？」インターホンから、陳琳嫣のだらけた声が聞こえてきた。

「俺だよ」

「あぁ、林亦か。ちょっと待って、まだやることが残ってるから」陳琳嫣はいつもの調子でそう返事した。

「呂おばさんが優しくしてくれなかったら、誰がお前のわがままに付き合うものか」林亦は欠伸をしながら、陳琳嫣がまた10分以上かかるだろうと見当をつけた。

林亦は仕方なくカバンを玄関に置き、団地の周りをジョギングし始めた。