林亦の冷たい声に、肖陽の心は暗くなった。
肖陽は自分の横を振り向き、近くにある一本の刀に目を向けた。その刀の刀鋒は鋭利だった。
林亦は冷ややかな目で肖陽を見つめていた。
時間が一分一秒と過ぎていき、肖陽の額の汗は増えていった。
謝罪など、絶対にできるはずがなかった。
彼、肖陽は今まで一度も頭を下げたことがない。これは尊厳に関わる問題だった。
苦しい目に遭うことなど、彼、肖陽には経験がなかった。
「残り十秒だ」
林亦の冷たい声に、肖陽は震え上がった。
もういい!
どうあっても一か八かやってみるしかない。まだ髭も生えていない張齊のような小僧に脅されるわけにはいかない!
肖陽は目を光らせ、歯を食いしばり、決意を固めて動こうとした時。
ずっと閉まっていた個室のドアが開かれた。
「誰が帝豪で騒ぎを起こしているんだ。ここがどんな場所か分かってないのか!」ドアの外で、頭に包帯を巻いて、タバコをくわえた男が立っており、ドアを開けて中に向かって叫んだ。
来た人を見て、肖陽は喜色を浮かべた。「成九!ちょうどいいところに来た。このガキを殺してくれ!」
「勝手に俺の個室に入り込んで、俺の部下を殴り倒すなんて、ここは帝豪KTVだぞ。このガキは目に余る!」
肖陽は声を荒げ、誰かが来たのを見て、心の中でほっと胸を撫で下ろした。
「肖兄さん?」ドアの外の梁成九は、ソファに座っている肖陽を見て、少し驚いた様子だった。
彼は当然肖陽のことを知っていた。以前、于偉大と一緒に何度か酒席に参加した時に会ったことがあった。
先ほど店内から、この個室の状況がおかしいという報告があり、梁成九は様子を見に来たのだ。通常、帝豪KTVで騒ぎを起こす者などいないはずだが、例外はあるものだ。
もうしばらくすると、明海市の商界で再び勢力図の塗り替えが起こる。この肖陽は東亭區の肖邦亮の息子で、肖邦亮は帝豪KTVの背後にいる王帝豪と同格の存在だ。
この肖陽と良好な関係を築けば、梁成九にとってはきっと良いことだろう。
そう考えた梁成九は心中で決断を下し、肖陽の前に立っているその男の方を向いた。
林亦は肖陽に向かって立っていたため、梁成九には後ろ姿しか見えなかった。