道中、趙辰は陳琳嫣と会話を交わしていたが、陳琳嫣は少し上の空のようだった。
それに気づいた趙辰は眉をひそめたが、特に気にはしなかった。
白龍山に着けば、接触する機会はいくらでもある。しかも趙辰は自分の家柄や容姿、その他あらゆる面で大きな自信を持っていた。
それに加えて、黎青松が側で助け舟を出してくれている。この陳琳嫣が自分の手から逃げられるはずがないと確信していた。
新幹線がゆっくりと停車し、一行は車両から降りた。
黎青松の一行は六人ほどで、林亦、陳琳嫣、方尤を加えると九人になった。
新幹線駅を出るとすぐに、スーツを着た中年の男性が近づいてきて、口元に薄い笑みを浮かべながら「黎様、こちらです」と声をかけた。
「こんにちは?あなたは?」
「張部長がお迎えに手配した者です」中年の男性は追従するような笑顔で言った。「車は既に用意してあります。人数が多いと伺いましたので、観光バスを手配させていただきました」
「張恒のやつ、なかなか気が利くじゃないか」黎青松は顎を上げ、傍らの李子明や女子学生たちは黎青松を輝かしい目で見つめていた。
このような待遇を受けられるということは、黎青松の友人が白龍山ホテルでかなりの地位にいることを示していた。
一行は中年の男性について観光バスに乗り込んだ。車はオープンタイプの観光用で、周りには手すりはあるがガラス窓はなく、最大12人まで乗れるものだった。
「方尤、僕と同じ列に座らない?」
乗車時、李子明は方尤の側に駆け寄り、自ら申し出た。
実際、この旅行には黎青松、李子明、趙辰の他に三人の女子学生が同行していたが、この三人は学校では容姿が中の上くらいだったものの、方尤、陳琳嫣、邵思思といった学校一の美人たちと比べると、たちまち見劣りしてしまった。
「まあまあ、李子明、易思城の女を横取りしようってわけ?相変わらずの悪い癖ね」王麗燕という女子学生が隣の二人の女子を抱き寄せながら、李子明に向かってクスクス笑った。
「だからバスケの天才李子明が、あんなに多くの女の子を断ってたのね。全部方尤のためだったんだ」もう一人の馬月瑩が同調して言った。
「そりゃそうよ、方尤は可愛いし、スタイルもいいもんね」最後の李秋香は不満げに口をとがらせた。