第84章 白龍山リゾートホテル

「夏社長、ここからはあなたの所有となりますが、まずご案内させていただきましょうか?」

「夏社長と呼ばなくていい、夏目でいいから」

白龍山リゾートホテル。

白龍山の中腹に建つこのリゾートホテルは全4階建てで、その後ろには5棟の2階建ての小さな別荘が並んでいた。

これらの別荘は富裕層向けの賃貸用で、一泊5千元から1万元以上の料金設定で、山下の景色を一望できる絶好のロケーションにあった。

シンプルな服装の夏目がリゾートホテルの屋上に立ち、後ろには黒いスーツを着た張恒が媚びるような笑顔で彼を見ていた。「では夏様とお呼びさせていただきます。あの、昨日会長から連絡がありまして、この白龍山リゾートホテルを今後はあなたに任せるとのことです。よろしければ、今から施設をご案内させていただきましょうか?」

「この白龍山リゾートホテルは、会長が8年前に購入したものです。建物の建設だけでも1年半かかり、その後3年かけて養魚池や人工湖の整備、周辺の植栽なども専門家に依頼して行いました」

「現在、白龍山リゾートホテル全体の年間売上は約8千万元で、諸経費を差し引いた粗利は1千万元ほどになります」

張恒は慎重に報告しながら、自分と同年代くらいの若者を横目で見ていた。

この夏目という若者は、まだ学生だと聞いている。しかし、夏家に生まれた彼は、金の匙をくわえて生まれた人物だ。まだ卒業もしていないのに、こんな大きな金の山を任されているのだ。

白龍山リゾートホテルの土地だけでも数億元の価値があるが、夏家の中も平穏とは言えないようだ。この夏様の表情を見ていると、何か心配事があるようにも見える。

もしかして、学校の女の子に振られでもしたのだろうか?

そんな可能性を考えて、張恒は思わず首を振った。

そう考えていた時、張恒のポケットの携帯が振動した。取り出して見ると、黎青松からの着信だった。

「用事があるなら先に行って構いませんよ。しばらく一人で過ごしたいので、一人で歩き回ってみます。何か必要があれば呼びますから」夏目は振り返って、張恨を見た。

彼は今日、シンプルなシャツを着ていて、派手なブランド物ではなかった。

先日SKバーで起きた出来事は、まだ夏目の心を落ち着かせることができないでいた。

丘問蕊が終始周浩明の味方をしていたことも、自分が本当にダメな人間なのかということも。