第117章 芝生の王子

林亦はボールを持って突進し、鋭い刃のようだった。

そのフォワードだけでなく、傍にいた易思城も反応できなかった。

先ほどの出来事があまりにも速すぎて、易思城は動く気も起きず、林亦が一蹴りで転がされるのを待っているだけだった。

易思城が我に返った時には、林亦はすでにボールを持ってゴールに向かっていた。

二人のミッドフィールダーは林亦が走ってくるのを見て、躊躇なく立ち向かっていった。

「ちっぽけな道化師め」林亦は軽蔑の眼差しを向け、加速しながら、二人のディフェンダーが近づいてきた時、突然急停止し、つま先でボールを左側に蹴り出した。

ボールは二人のディフェンダーの横をすり抜けた。彼らは慣性の法則で体を止められず、ボールが防御線を軽々と越えていくのをただ見つめるしかなかった。

林亦は加速してボールを運び、すぐにペナルティエリアの外に到達した。

七組のゴールキーパーは守備の準備を整え、ディフェンダーたちは一斉に林亦に向かって殺到した。

「素人め、お前たちは私と同じフィールドに立つ資格もない」

「サッカーのボールタッチなど、九玄仙尊様にとっては笑い話にすぎない」

「かつて極微の炎を操って破れた霊丹を修復したことがある。その時必要とした感覚は、お前たちには理解できないものだ!」

林亦は冷たい目でゴールを見つめ、押し寄せてくる数人のディフェンダーを完全に無視した。

足を上げる。

シュート!

ボールは林亦の足の甲に当たった瞬間、一瞬変形した。

次の瞬間、ボール全体が砲弾のように、ゴールに向かって飛んでいった。

弧を描くこともなく、派手な技巧も一切なし。

あるのは速さだけ。

極限の速さ!

バン!

ボールはゴールネットを揺らし、ネットの紐を引っ張って遠くまで飛んでいった。

ゴールキーパーは目を見開き、反応する時間すらなかった。

先ほどのシュートは、何の対応もできないうちに、ボールが彼の横を通り抜けてゴールに突き刺さっていた。

今でもゴールキーパーは、ボールが飛んできた瞬間の風圧を感じることができた。

こいつ、こいつのキック力は強すぎるだろう!

後半開始5分、七組が得点。

7対1!

「こ...こいつ、人間なのか?」サイドラインで、李岩は林亦を見つめて目を見開いた。