その炎は林亦の掌に現れ、炎の光が揺らめき、彼の手全体を完全に包み込んだ。
ホテルの警備員が物音を聞きつけて駆けつけたが、目の前の光景に凍りつき、目を見開いたまま、信じられない様子で動けなくなった。
炎は林亦の手を包み込んでいたが、彼の服や肌を焼くことはなかった。
林亦は冷ややかな目つきで、手の中の炎を地面に投げつけた。突然、林亦を中心に、十数本の細い火の鎖が四方八方へ猛烈に広がっていった。
火の鎖が通り過ぎた場所では、テーブルや椅子、假山など、すべてが燃え始めた。瞬く間に、ロビー全体が炎に包まれた。
「あっ!」
細い火の鎖がフロントデスクまで伸び、次の瞬間、フロント全体が燃え始めた!
ロビー内の温度が急上昇し、火災警報が鳴り響いた。
「消火だ!早く消火を!」
一人の警備員が状況を見て、フロントに火災通報をさせた後、数人が袖をまくり上げて林亦に向かって突進してきた。表情は険しかった。
「よくもここで放火なんかできたな!今日はお前を殺しても文句は言わせないぞ!」
先頭の男が怒鳴りながら、林亦に向かって突進してきた。数人が襲いかかってきたが、わずか数秒で全員が林亦によってあっさりと地面に叩きつけられた。
林亦は炎の海の中に立ち、瞳にオレンジ色の炎を映しながら、再びフロントの女性に向かって歩き出した。
フロントの女性は青ざめた顔で、本能的に逃げようとしたが、足がすくんで数歩も進まないうちに、炎に行く手を阻まれた。
「三秒間で、二つの選択肢だ。」
「劉龐の部屋番号を教えるか、それとも、今すぐ燃やされるか。」
林亦は左手を軽く上げ、炎の塊を掴み、冷酷な表情を浮かべた。
「十...十八階、1801号室です。」
二人のフロント係の女性は幽霊でも見たかのように、怯えて泣き出した。
エレベーターが次々と開き、ホテルの火災警報が作動し、大勢の客が慌てて階下に駆け下りてきたが、燃え盛るロビーを目にすると、青ざめた顔で炎の壁を突き抜けて逃げ出す勇気が出なかった。
残りの人々は消火活動を始めていた。
しかし林亦は、これらすべてに無関心だった。
エレベーターには向かわず、非常階段を一段一段上っていった。
……
十八階、1801号室。