藤堂澄人「……」
「私の携帯は?」
九条結衣は一瞬戸惑い、手にしたバッグの中を探ってみると、確かに携帯がないことに気づいた。
いつ盗まれたのだろう?
彼女は眉をひそめ、素早く前に進み出て、九条初の携帯に向かって言った。「あの、すみません。私の携帯を拾っていただき、ありがとうございます。携帯には重要な資料がたくさん入っているので、返していただけませんか?お礼はしっかりとさせていただきます」
言葉が終わると、電話の向こうから聞き覚えのある嘲笑う声が聞こえてきた。「お前のその程度の金なんか、俺が欲しいと思うか?」
九条結衣は一瞬固まり、その後表情が暗くなった。「藤堂澄人?」
携帯が彼の車に落ちたの?
九条結衣は眉をひそめ、心の中でイライラが募った。
先ほどの「見知らぬ人」に対する丁寧な口調はすっかり消え、「藤堂澄人、今どこにいるの?携帯を取りに行くわ」