九条結衣が藤堂邸に到着した時、居間で新聞を読んでいた藤堂お婆様は本当に驚いた。老眼鏡の奥の目が、急に輝きを増した。
「結衣、どうしてここに?」
「お婆様」
ここまでの道のりで、藤堂澄人のことを引き裂きたいほど憎んでいたが、藤堂お婆様の前では、その怒りを抑え込んだ。
「さあ、さあ、早く入りなさい」
藤堂お婆様は大変喜んで、孫と孫嫁が仲直りできることを密かに願っていた。結局のところ、結衣は彼女が直々に選んだ孫嫁で、その人柄も十分に理解していた。
彼女の目には、結衣こそが孫に相応しい存在だった。
入室後、九条結衣は単刀直入に言った。「お婆様、藤堂澄人に会いに来ました」
孫に会いに来たと聞いて、藤堂お婆様は大喜びした。「澄人なら書斎にいるわ。あなたもこの家のことはよく知っているでしょう。自分で上がって行ってちょうだい」