100.背後の人

藤堂澄人には藤堂瞳という妹が一人いて、木村靖子は彼女を救い、そのために子宮を失った。さらに以前、自分を救うために半死半生になったこともあり、藤堂家の人々は皆、木村靖子に深く感謝していた。

特に妹の藤堂瞳は、木村靖子に命を救われた恩があるから、恩返しをしなければならないと常々言っていた。

その後、藤堂家は様々なコネを使って木村靖子に適合する子宮を見つけ移植手術を行い、今では普通の女性と変わらない生活を送れるようになったが、彼女の恩は藤堂家の人々、特に藤堂瞳の心に深く刻まれていた。

彼が九条結衣と結婚した後も、藤堂瞳は何かと彼と木村靖子が会える機会を作り、木村靖子のために何度も九条結衣を困らせることさえあった。

これらのことを彼は知らないわけではなかったが、あえて口を出さなかった。特に九条結衣に関することには、彼女を擁護することは一切なく、そのため次第に九条結衣は木村靖子が彼の本命だと思い込むようになった。