101.裁判所からの郵便物

七年前も今も、彼は九条政の能力に対して常に疑問を抱いていた。八年前の九条グループの危機の際、誰もが九条政が最後の土壇場で状況を立て直したと思っていたが、彼は知っていた。九条グループを救った人物は、決して九条政ではなかったことを。

表向きは藤堂グループが当時、九条グループに出資して経営を安定させたとされているが、当時の状況に自ら関わっていた彼は、藤堂グループの出資金は錦上花を添えるようなものに過ぎず、雪中に炭を送るほどの意味はなかったと感じていた。

当時、藤堂グループの資金がなくても、九条グループは乗り切れたはずだった。

彼は当時、誰かが裏で九条グループを助けているのではないかと疑っていた。しかし、あれほど誇り高い令嬢の九条結衣が、あんなことをした後でも、自ら身を差し出しに来るなんて、九条グループが本当に追い詰められていなかったとすれば、あり得ないことだったはずだ。

そのため、当時は少し疑問に思っただけで、深く追求することはなかった。

しかし今改めて考えてみると、もし当時自分の身に起きたことと瞳の事故が木村靖子によるものだとすれば、木村靖子の後始末をできる人物は九条政である可能性が高い。だが九条政にはそんな力はない。つまり、九条政の背後に実力者がいるということか?

「一体誰なんだ?」

藤堂澄人は物思いに沈むように目を細め、つぶやいた。

しかし、これらすべては木村靖子が犯人だという前提の話だ。もし木村靖子がやっていないとしたら?

藤堂澄人は再び九条結衣のことを考えた。

この一件は、今になって考えても、九条結衣の疑いが最も濃厚だった。

当時、彼は九条結衣の声を聞いた。そして、これらの事件の手際の良さと九条結衣の背景を考えると、後始末を全て九条総長がしたとすれば?

そうすれば全てが説明できる。

しかし九条総長という人物は……

彼はあまり親しくはなかったが、聞いている限りでは九条総長は非常に正直な軍人で、軍人特有の気骨と誇りを持っていた。そんな誇り高い人物が、九条結衣のそんな行為を手助けするだろうか?

藤堂澄人は当時のことを色々と考えたが理解できず、心はますます落ち着かなくなっていった。

あの事件は、彼の心の中の結び目だった。それが解けない限り、九条結衣に対して何事もなかったかのように振る舞うことは絶対にできない。