松本裕司は一瞬固まり、頷いて「はい、藤堂さんは今日退院です」と答えた。
藤堂澄人は腕時計を見て「ふむ」と一言言い、社長椅子から立ち上がり、上着を手に取って出て行った。
松本裕司は慌てて後を追った。有能な秘書として、常に社長の側にいなければならないのだ。
藤堂澄人が藤堂瞳の病室に着いた時、彼女の荷物はすでに片付けられており、木村靖子と話をしているところだった。
藤堂澄人が入ってくるのを見て、藤堂瞳と木村靖子の目が輝いた。
「お兄ちゃん、私を迎えに来てくれたの?」
藤堂澄人は表情を硬くしながら、頷いて「ああ」と答えた。
「やっぱりお兄ちゃんは私のことが一番大好きなんだね。退院の日まで覚えていてくれて」
藤堂瞳は甘えるように藤堂澄人の側に寄って、「お兄ちゃん、実は域が迎えに来てくれるだけで十分だったのに、わざわざ来てくれなくても」