その言葉を聞いて、藤堂澄人の目に一瞬冷たい光が走り、そして頷いて尋ねた。「当時、君は彼女が部屋から出て行くのを実際に見たのか?」
「ええ、どうしたの?」
木村靖子は脇に置いた手が、かすかに震えた。すぐに強く握りしめ、何とか落ち着きを取り戻して藤堂澄人を見つめながら続けた。「ご存知の通り、私は彼女が怖かったの。彼女が出て行かなければ、私はきっとあなたを助けに入る勇気なんてなかったわ」
彼女は重要な部分を避けながら話し、下唇を軽く噛んで、一層憐れみを誘う様子を見せた。
「本当に彼女を見たのか?」
藤堂澄人は目を細めて繰り返し、木村靖子の顔に向けられた視線はますます鋭くなり、その目から放たれる光は木村靖子を射抜くかのようだった。
木村靖子は彼の視線に心臓が震えたが、平静を装うしかなかった。「澄人さん、どうしたの?私の言うことを...信じていないの?私が姉さんを陥れようとしていると思っているの?」