116.警察の力を無駄にするな

薄い唇がこの時固く一本の線になり、とても悔しそうな表情を見せた。

九条結衣は彼と木村靖子のことについてこれ以上聞きたくなかった。藤堂澄人の手から必死に逃れ、外へ向かって歩き出した。彼が田中行に電話をかけてくれないなら、他の方法を考えるしかない。

雫を田中行に任せるなんて、全く安心できなかった。

「藤堂澄人、過去のことについてはもう議論したくないわ。田中行に電話をかけるか、彼の番号を教えてくれない?」

彼女は深く息を吸い、我慢強く言った。

藤堂澄人は彼女をしばらく見つめていた。結衣は彼が協力してくれないと思っていたが、彼は彼女をじっと見つめた後、浴室を出て行った。

結衣は急いで後を追い、藤堂澄人が既に田中行に電話をかけ、携帯を結衣に渡すのを見た。

結衣は急いで受け取り、電話が数回鳴った後、田中行のかすれた声が聞こえてきた。

「もしもし?」

「田中さん、雫はまだそちらにいますか?」

電話の向こうの人は数秒沈黙した後、深く「うん」と答えた。「彼女は寝ています」

結衣が夏川雫を迎えに行くと言おうとした瞬間、携帯は藤堂澄人に奪われてしまった。結衣は顔を曇らせ、「藤堂澄人...」

「雫は行のところで安全だ」

藤堂澄人は結衣の言葉を遮った。結衣は彼を不機嫌そうに横目で見て、冷笑した。「どうしてそう言い切れるの?」

「二人は恋人同士だ」

藤堂澄人の答えに、結衣は長い間呆然としていた。やっと信じられない様子で口を開いた。「な...なに?」

雫は彼女と田中行を数回会わせただけなのに、もう田中行の人になったの?

藤堂澄人は結衣の心の疑問を見抜いたようで、「二人は大学時代から付き合っていた」と言った。

結衣の目の中の驚きはさらに深まった。

大学?

確かに雫から大学時代に彼氏がいたと聞いたことがある。後に浮気されて別れたって?

その人が田中行だったの?

そう考えると、結衣は藤堂澄人を見て、目の中の皮肉な笑みを強めた。「雫の言う通りね、やっぱり類は友を呼ぶわ」

藤堂澄人は結衣がなぜ突然そんなことを言い出したのか分からなかったが、彼女の言う「類は友を呼ぶ」が明らかに良い意味ではないことは分かった。