117.頭痛

アメリカにいた頃、雫が元カレの話をする度に、彼女は雫の心の奥底にある悲しみを感じ取ることができた。雫がその元カレのことを忘れられないのは明らかだった。

二人の間で何があったのかは分からなかったが、確かに...他人である自分が口を出せる問題ではなかった。

少し躊躇した後、彼女は頷いて「分かりました」と答えた。

彼女が承諾したのを見て、藤堂澄人の表情はようやく和らいだが、次の瞬間、また表情が変わった。

九条結衣が寝室のドアを開けて外に出ようとしているのを見て、彼女が何をしようとしているのか察したらしく、顔を曇らせ、不機嫌そうに言った。「こんな夜中にどこへ行くんだ?」

「家に帰ります」

「結衣!!」

藤堂澄人は厳しい声で叫び、長い脚で九条結衣の前まで歩み寄った。「ここがお前の家だろう。どこに帰るんだ?」