しかし、後ろから聞こえる足音がベッドに近づいてきて、そして藤堂澄人の声が響いた。「起きて薬を飲みなさい」
九条結衣の体が一瞬硬くなり、振り向くと、藤堂澄人が片手にコップを持ち、もう片方の手に白い錠剤を二つ持ってベッドの傍に立っているのが見えた。
彼女の目には少し驚きの色が浮かんでいた。記憶の中の藤堂澄人は、特に彼女に対してこれほど思いやりのある人ではなかった。
だから、先ほど頭痛があるかと聞いた後すぐに立ち去った時も、彼女は深く考えなかった。藤堂澄人はそういう冷淡な人だと思っていただけだった。まさか彼が薬を取りに行ってくれたとは思わなかった。
心の中では藤堂澄人を拒絶していたものの、拒絶するために自分の体を危険にさらすようなことはしなかった。起き上がって藤堂澄人が差し出した水と薬を一気に飲み込み、彼を見て「ありがとう」と言った。