その後、彼女は願いが叶い、彼と婚約を交わしました。十八歳になったら結婚できるはずでしたが、待ち望んでいた先に待っていたのは、婚約破棄の知らせでした。
その知らせを聞いた瞬間のことを思い出すと、頭が真っ白になり、世界が暗闇に包まれたような気がしました。
なぜなら、彼女の人生を照らし続けていた灯りが、突然消えてしまったからです。彼女の道は真っ暗になり、一人で歩むには余りにも辛すぎました。
婚約破棄の翌年、九条グループの危機の際、彼女は自分の手段を隠し、藤堂澄人と結婚するために、最も愚かな方法を選びました。
藤堂澄人のもとを訪れ、プライドを捨てて九条家との縁組みを懇願しました。藤堂グループが九条グループと提携するだけで、たとえ出資がなくても、九条グループの株価は上がるはずでした。
藤堂澄人が承諾しなくても、彼女には藤堂グループの危機を乗り越える方法がありました。
藤堂澄人が断ることも予想していました。結局、藤堂瞳から聞いた話では、婚約破棄の理由は澄人が木村靖子を愛していたからでした。プライドを捨てて縁組みを懇願したのも、ただの試みのつもりでした。
しかし、藤堂澄人が承諾した時、彼女は驚きと同時に、喜びで声を上げて泣きたい気持ちになりました。
後に藤堂澄人も藤堂瞳も、これは全て藤堂お婆様のおかげだと言いました。藤堂お婆様がいなければ、澄人は決して彼女との結婚を承諾しなかったはずだと。
それでも彼女は希望を持ち続けました。藤堂澄人と結婚できたのだから、いつか雲が晴れて月が出るように、幸せが訪れるはずだと。でも結果は?
九条結衣は心の中で自嘲的に笑いました。結局、全ては振り出しに戻ってしまったのです。
藤堂澄人は九条結衣が突然黙り込むのを見て、彼女の目に何かを思い出すような色が浮かぶのを感じました。最初は冷たかった眼差しが次第に温かみを帯び、その後期待に変わり、また暗くなり、そして喜びへ、最後に失望へと…
この一連の表情の変化が彼女の顔に次々と現れ、最後には自嘲的な表情へと変わっていきました。
彼は眉をひそめ、何か言いかけましたが、結局ため息をつくだけで、「寝なさい」と言いました。
そう言い残すと、彼は書斎へと向かいました。
九条結衣は藤堂澄人の大きな背中が書斎の入り口で消えるのを見つめ、複雑な思いを瞳に宿しました。