でも、あの日ママが言っていたことを思い出した。叔父さんには彼女がいるって。テレビで見る第三者はとても悪い存在だから、ママにそんな立場になってほしくない。だから、この「継父」がどんなに完璧でも、受け入れることはできないのだ。
そこで、彼は藤堂澄人を見上げ、真剣な表情で言った。「叔父さん、まだ僕の継父じゃないんだから、僕のことを息子だって言わないでください。そんなことが広まったら良くないです。」
他人がママのことを第三者だと言い出すから。
藤堂澄人は、息子がこんな大人びた口調で「良くない」なんて言い出すのに、笑うべきか泣くべきか分からなくなった。
すぐに何かに気付いたように眉をひそめ、「お前が俺の息子じゃないなら、誰の息子なんだ?」と尋ねた。
初は少し傲慢げに顎を上げ、横にいる美しい女性を見やって藤堂澄人に言った。「もちろん、ママが誰と結婚するかで決まりますよ。その人の息子になります。」
そう言いながら、また藤堂澄人を見つめ、その目には複雑な感情が浮かんでいた。叱りたいような、でもこの叔父さんを強く非難する気にもなれないような。だって、この叔父さんは自分にそっくりで、叔父さんを責めるのは自分を責めているようで。
そこで、語彙の少ない初は少し黙った後、深刻な表情で藤堂澄人を見つめ、こう言った。「叔父さん、もう彼女がいるんですから、ママのことを気にかけちゃダメです。男なら一途でなければいけません。二股をかけるような人なんて、僕は軽蔑します。」
傍らの九条結衣は思わず口元を引きつらせた。藤堂澄人が息子にこんなにも言い負かされて肝を煮やしているのを見て、なぜか急に気分がすっきりした。
藤堂澄人は確かに初のこの言葉に肝を煮やしていた。もしこの「男」がまだ子供でなければ、男同士の作法で分からせてやるところだった。
深く息を吸い、お尻を叩きたい衝動を抑えながら、冷たい表情で言った。「誰が俺に彼女がいるって言った?」
「ママが言ったんです。ママは嘘なんてつきません。」
初は躊躇なく、嘘をつかない母親を売ってしまった。
九条結衣:「……」
間違いなく実の子だ。
藤堂澄人は九条結衣を見つめ、目を細めた。強烈な危険な雰囲気が、一瞬にして九条結衣に向かって押し寄せてきた。
九条結衣は眉をひそめ、心の中で「デマを流した」という後ろめたさが湧き上がってきた。