164.旦那様は藤堂澄人に似ていますね

九条結衣は刺激的なアトラクションが好きではなかったので、藤堂澄人に息子の付き添いを任せ、自分は脇で待っていた。同じように待っている女性たちも何人かいた。

「旦那様とお子様がとても素敵ですね。テレビ局のリアリティ番組に出演されているんですか?」

横にいた女子大生らしき女性が、九条結衣に小声で尋ねた。

九条結衣は体が強張り、仕方なく答えた。「いいえ、ただ息子を遊びに連れてきただけです」

アトラクションの上から手を振る息子を見て、無理やり笑顔を作った。藤堂澄人を見ると、彼も彼女を見ていて、その意味ありげな笑みを浮かべた表情に、思わず彼をアトラクションから突き落としたくなった。

「ご主人、藤堂澄人さんに似ていますね。もしかして本人ですか?」

横の別の女性も興味深そうに尋ねた。その綺麗な瞳には、少し興奮の色が浮かんでいた。

九条結衣は内心で歯を食いしばり、心の中で藤堂澄人を厄介者と罵りながら、唇の端から笑みを絞り出して言った。「違います。ただ少し似ているだけです」

九条結衣はこれ以上同じような質問に答えたくなかったので、人の少ない場所に移動して、父子が降りてくるのを待った。

すぐに、藤堂澄人が九条初を抱いて彼女の方に歩いてくるのが見えた。

「ママ、すっごく面白かったよ。ママも乗ってみて」

初は藤堂澄人から降りると、九条結衣の前まで駆け寄った。

「ママは苦手だから、初が楽しんでね」

九条結衣は藤堂澄人を見つめ、唇を噛んで少し黙った後、言った。「藤堂澄人、あなたがどこに行っても、数え切れないほどの女性があなたを見つめているのを知っていますか?」

本当は次からは母子について来ないでほしい、母子まで注目の的になりたくないと伝えたかったのだが、彼女の少し怒った顔を見た藤堂澄人は、眉を下げて小さく笑った。

手を伸ばして彼女の顔に触れ、指で柔らかな髪に触れながら、少し身を寄せて「嫉妬?」と言った。

九条結衣は怒り心頭に達し、藤堂澄人のすねを蹴った。「あなたが目立つのは構いませんが、私たちを巻き込まないでください」

そう言って、初の手を引いて別の方向へ歩き出した。