164.旦那様は藤堂澄人に似ていますね

九条結衣は刺激的なアトラクションが好きではなかったので、藤堂澄人に息子の付き添いを任せ、自分は脇で待っていた。同じように待っている女性たちも何人かいた。

「旦那様とお子様がとても素敵ですね。テレビ局のリアリティ番組に出演されているんですか?」

横にいた女子大生らしき女性が、九条結衣に小声で尋ねた。

九条結衣は体が強張り、仕方なく答えた。「いいえ、ただ息子を遊びに連れてきただけです」

アトラクションの上から手を振る息子を見て、無理やり笑顔を作った。藤堂澄人を見ると、彼も彼女を見ていて、その意味ありげな笑みを浮かべた表情に、思わず彼をアトラクションから突き落としたくなった。

「ご主人、藤堂澄人さんに似ていますね。もしかして本人ですか?」

横の別の女性も興味深そうに尋ねた。その綺麗な瞳には、少し興奮の色が浮かんでいた。