229.顔が痛くないのかい

九条結衣に厳しく叱られて顔色が戻らない藤堂瞳と、藤堂澄人の九条結衣に対する態度に深く傷ついた木村靖子は、藤堂澄人に完全に無視されていた。

藤堂瞳は、幼い頃から自分を可愛がってくれた実の兄が、九条結衣が自分を叩いた時に無反応で、九条結衣が指を突きつけて罵った時も怒らず、むしろ進んで彼女を空港まで送ると申し出たことが信じられなかった。

あいつは呪いでもかけられたんじゃないのか。

「お兄ちゃん!戻ってきて!お兄ちゃん!!」

藤堂瞳は、また心臓病が発作を起こしそうだった。今回は実の兄に腹を立てたせいだ。

九条結衣はC市の会社の件を処理するのに急いでいたため、藤堂澄人とどうでもいいことで時間を無駄にしたくなかった。

だから、松本裕司が車を二人の前に停めた時、彼女はすぐにドアを開けて乗り込んだ。