224.いつもバカに出会う

彼女が今すぐC市に戻ると聞いて、藤堂澄人は少し不本意だったが、それでも携帯を彼女に渡した。

九条結衣は夏川雫に電話をかけ、すぐに夏川雫が出た。

「雫」

「結衣、どこにいるの?」

九条結衣は夏川雫に病院にいることを伝え、そのまま病院で彼女を待つことにした。

「ありがとう」

携帯を藤堂澄人に返した後、彼女は再び冷たく礼を言い、それ以上藤堂澄人との会話を避けた。

九条初はここ数日、母親の家で預かってもらっているが、彼女を探して泣いているかもしれない。

九条初のことを考えると、九条結衣は失った親権裁判のことを思い出し、気持ちが一気に沈んでいった。

藤堂澄人は彼女の表情が急に暗くなるのを見て、胸が痛んだ。きっと息子の九条初のことを考えているのだろう。

昨夜、彼女が意識を失っている時に感情的に彼を憎むと叫んでいた姿を思い出し、藤堂澄人は胸の痛みがさらに強くなった。

しばらく躊躇した後、彼は口を開いた。「九条初は...」

「何?九条初を独り占めにすると心配?」

「九条初」という言葉を聞いた途端、九条結衣の全身の棘が立った。さっきまでの柔らかな様子は一瞬で針だらけのハリネズミに変わり、その冷たく刺すような眼差しに、藤堂澄人は全身が痛むような思いをした。

藤堂澄人は眉をひそめ、そういう意味ではないと言おうとしたが、明るい声に遮られた。「お兄ちゃん!」

藤堂瞳だった。

その声を聞いただけで九条結衣は頭が痛くなった。藤堂瞳という人は一日彼女の前で嫌がらせをしないと、日々が落ち着かないのだろう。

案の定、九条結衣がそう思った直後、藤堂瞳は続けて言った。「離婚したのに、まだお兄ちゃんにまとわりついているの?」

藤堂瞳は彼女の前に立っており、そばには木村靖子もいた。

九条結衣は二人がシャム双生児なのかと思うほど、どこへ行っても一緒にいた。

彼女は藤堂瞳と口論したくなかったので、ちらりと見ただけで、そのまま夏川雫を待ち続けた。

しかし藤堂瞳という人は、おそらく前世から九条結衣と深い因縁があるのか、彼女を見かけては嫌味を言わないと生きていけないかのようだった。

九条結衣が無視するのを見て、それを後ろめたさだと思い込み、さらに調子づいた。

「九条結衣...」

言葉が口から出かかったところで、藤堂澄人の冷たい警告の声で遮られた。「藤堂瞳!」