244.パパを裏切るスキル発動

初の目が、一瞬にして輝き出した。

藤堂澄人は自分を指差しながら、息子に言った。「ママと一緒になればいいんじゃない?」

初は眉をしかめ、表情に迷いが浮かんだ。

藤堂澄人は迷う時間を与えず、さらに誘いかけた。「パパはすごいんだぞ。ママを守れるし、初も守れる。パパはたくさんお金もあるから、他の男の人よりもずっとお金持ちなんだ。ママが働かなくても、パパは百歳までみんなを養っていけるんだよ。一番大事なのは、初はパパの実の子だから、パパは初が一番好きで、絶対にママと離れ離れにはさせないってことだ」

その言葉を聞いて、初は目を動かし、明らかに心が動いた様子だった。

しかし、すぐに困ったように眉をしかめ、「でも、ママはパパのことが好きじゃないよ」と言った。

「違うぞ」

藤堂澄人は手を上げ、初の額を軽く弾いた。不満そうな目を向ける息子に、「女性というのは口では違うことを言うものなんだ。ママはパパのことが大好きなんだよ」と言った。

口が裏腹という言葉の意味を、初は知っていた。

先日、叔父さんと叔母さんがテレビを見ていた時、叔母さんがテレビの中のお姉さんは口が裏腹だと叔父さんに言っていた。そのお姉さんはそのお兄さんのことが好きなんだと。

そのお姉さんはそのお兄さんのことが好きだから、子供を産んだんだとも言っていた。

じゃあ、ママが自分を産んでくれたということは、ママはきっとパパのことが好きなんだ。

そう考えると、初の目はさらに輝きを増した。「わかったよ、パパ」

藤堂澄人の顔に、再び満足げな表情が浮かび、息子の頭を優しく撫でた。「いい子だ、賢いぞ」

九条結衣は中で父子がどんな会話を交わしているのか分からなかったが、長い間外で待っていると、やっとドアが開いた。

父子が仲良く抱き合っている様子を見て、明らかにこれは非常に楽しい会話だったことが分かった。

九条結衣は眉をしかめ、無邪気な息子の顔に浮かぶ隠しきれない喜びを見て、この子はきっと藤堂澄人に何か言いくるめられたに違いないと思った。

「初」

彼女が前に出て話そうとした時、初が言った。「ママ、さっき考えてみたんだけど、あのおじさんたちは全然ママに合わないと思う。やっぱりパパが一番いいよ」

九条結衣:「……」