藤堂澄人の手の動きが一瞬止まり、次の瞬間には彼女が何を言いたいのかを理解し、目を伏せて九条結衣を見つめ、唇の端がわずかに上がった。
「本当に九条初を私の側に置いておきたいの?」
彼女は顔を上げて彼を見つめ、澄んだ瞳の奥には、必死に抑えようとする期待が宿っていた。
そうやって彼を見つめる瞳は、塵一つない程に清らかで、心の中の想いがすべてその瞳から溢れ出しそうだった。
しかし藤堂澄人はその瞳を見つめながら、その熱さに胸が焼けるようで、いつもは静かな心の奥が掻き乱されるのを感じた。
「それは君の私への態度次第だな」
髪の水気がほぼ乾いたのを確認すると、藤堂澄人は動きを止め、少し身を屈めて、鼻先が九条結衣の顔にさらに近づいた。
吐き出された熱い息が九条結衣の鼻先に直接当たり、彼女は思わず心臓の鼓動が数拍抜けたような感覚に襲われた。