268.屈する時は屈する九条女王様

「ホテルの入り口で、よく考えてみたんだけど、私たちにはまだ昔話をする必要があると思うわ」

藤堂澄人の低い声が頭上から聞こえてきて、九条結衣の心臓は再び締め付けられた。彼女は藤堂澄人の手を腰から払いのけることも忘れていた。

まだ笑みを浮かべている藤堂澄人の目元を見上げると、170センチを超える身長は女性としては決して低くないが、藤堂澄人のその大きな体格が目の前に立つと、あの懐かしくも形のない威圧感が押し寄せてきた。

たとえ今は穏やかな表情で、口元に笑みを浮かべていても、九条結衣にはプレッシャーを感じずにはいられなかった。

九条結衣が息子の話題を必死に避けようとしているところに、藤堂澄人が言った。「結衣、俺の息子がまだお前のところにいるみたいだけど、返すつもりはないのか?」