もし客からクレームが来たらどうしよう?
まあ……まあ藤堂奥様だったからよかったものの、もし他の女性客だったら、藤堂社長がこんな風に客室の鍵を要求するなんて、どんな下心があるのかわからないわよね。
もちろん、そんなことはフロントの男性は言えるはずもなく、ただうつむいたまま、ロビーマネージャーに唾を飛ばしながら怒鳴られるのを我慢するしかなかった。
九条結衣がシャワーを浴び終え、バスローブを着て浴室から出てきた時、手に持ったタオルで髪を拭きながら顔を上げると、部屋のソファに座っている大きな人影を見て、大きく驚いた。
「藤堂澄人!!!」
髪を拭く動作を止め、タオルを握りしめたまま藤堂澄人の前まで駆け寄り、「どうしてあなたが私の部屋に?どうやって入ってきたの?」
彼女は奥歯を噛みしめ、目から火を噴くように藤堂澄人を睨みつけた。