267.傲慢な社長は全能である

もし客からクレームが来たらどうしよう?

まあ……まあ藤堂奥様だったからよかったものの、もし他の女性客だったら、藤堂社長がこんな風に客室の鍵を要求するなんて、どんな下心があるのかわからないわよね。

もちろん、そんなことはフロントの男性は言えるはずもなく、ただうつむいたまま、ロビーマネージャーに唾を飛ばしながら怒鳴られるのを我慢するしかなかった。

九条結衣がシャワーを浴び終え、バスローブを着て浴室から出てきた時、手に持ったタオルで髪を拭きながら顔を上げると、部屋のソファに座っている大きな人影を見て、大きく驚いた。

「藤堂澄人!!!」

髪を拭く動作を止め、タオルを握りしめたまま藤堂澄人の前まで駆け寄り、「どうしてあなたが私の部屋に?どうやって入ってきたの?」

彼女は奥歯を噛みしめ、目から火を噴くように藤堂澄人を睨みつけた。

藤堂澄人はソファに座ったまま、目を上げて目の前で怒りを露わにする女性を見つめた。水滴の垂れる髪が肩にだらりと垂れ、バスローブは緩んで襟元が開き、美しい鎖骨が覗いていて、セクシーで挑発的だった。

藤堂澄人の喉仏が思わず二度上下し、喉が突然乾いてきて、不自然に視線をずらし、まぶたを怠そうに持ち上げて、目の前でやや取り乱している女性を見つめ、唇の端を上げた。

突然、ソファから立ち上がり、九条結衣は彼のこの突然の動きに大きく驚き、反射的に後ろに二歩下がってから止まった。

その美しい瞳は今も警戒と敵意に満ちたまま藤堂澄人を見つめ、瞳の奥には微かな炎が漂っていた。

藤堂澄人は彼女を見つめながら、口元から低い笑いを漏らし、さらに二歩彼女に近づいた。九条結衣は本能的に後退しようとしたが、藤堂澄人に腰を掴まれてしまった。

彼が眉を上げ、言った。「知らなかったのか?傲慢な社長は何でもできるものだよ。自分の妻の部屋に入るくらい、何が難しいことがある?」

藤堂澄人の声は魅力的で、低く磁性を帯びており、この親密な雰囲気と相まって、何か妄想を掻き立てるような味わいがあった。

九条結衣の心臓は思わず早鐘を打ち始め、藤堂澄人の誘うような目を避けながら、タオルを握る手に緊張で余計な力が入った。

傲慢な社長は何でもできる?