275.愛人を持つことに優越感を持つ

藤堂澄人という人物は、彼の後輩であるにもかかわらず、九条政は彼と向き合うたびに、藤堂澄人の前で自分が一段低く感じてしまう。会うたびに、その圧迫感は強くなっていく。

木村富子と木村靖子の母娘は、九条政を引き込んで九条結衣を懲らしめようと思っていたが、九条結衣が藤堂澄人と一緒にいるとは夢にも思わなかった。

特に、藤堂澄人の様子から明らかに不快な感情が漂っているのを感じ取った。

「こんな偶然があるものですね、九条社長?」

藤堂澄人は眉をわずかに動かし、九条政を見つめた。木村家の母娘に関しては、完全に無視していた。

九条政は少し気まずそうな表情を浮かべ、何気なく九条結衣の顔を見た。彼女の軽蔑に満ちた表情を見て、すぐに怒りが込み上げてきた。

藤堂澄人に圧倒された威厳を、九条結衣から取り戻そうと思った。たとえ心の中では自信がなくても。