木村靖子は藤堂瞳の表情が急変するのを見て、頭を下げ、唇の端に得意げな笑みを浮かべた。
藤堂瞳が少し悩ましげに舌打ちをして言った。「そうね、結局私の甥は藤堂家の人々だもの。九条結衣がどんなに嫌いでも、甥を放っておくわけにはいかないわ」
藤堂瞳は顔に悩ましい表情を浮かべながら続けた。「でも、あの子を引き取ったら、九条結衣が子供を利用して兄に近づく口実になってしまうんじゃない?」
木村靖子は藤堂瞳が九条結衣の子供に対して全く拒絶感を示さないことに驚き、不安を覚えた。
あの私生児が本当に藤堂家に引き取られたら、たとえ自分が藤堂家に嫁いだとしても、あの私生児がいれば藤堂グループの財産は半分も持っていかれてしまう。
藤堂グループの半分とはいえ、数千億円の資産だ。あの私生児に横取りされるなんて我慢できない。