木村靖子は藤堂瞳の表情が急変するのを見て、頭を下げ、唇の端に得意げな笑みを浮かべた。
藤堂瞳が少し悩ましげに舌打ちをして言った。「そうね、結局私の甥は藤堂家の人々だもの。九条結衣がどんなに嫌いでも、甥を放っておくわけにはいかないわ」
藤堂瞳は顔に悩ましい表情を浮かべながら続けた。「でも、あの子を引き取ったら、九条結衣が子供を利用して兄に近づく口実になってしまうんじゃない?」
木村靖子は藤堂瞳が九条結衣の子供に対して全く拒絶感を示さないことに驚き、不安を覚えた。
あの私生児が本当に藤堂家に引き取られたら、たとえ自分が藤堂家に嫁いだとしても、あの私生児がいれば藤堂グループの財産は半分も持っていかれてしまう。
藤堂グループの半分とはいえ、数千億円の資産だ。あの私生児に横取りされるなんて我慢できない。
そう考えながら、彼女は再び藤堂瞳の耳元で囁いた。「だから瞳、子供にとって母親は必要不可欠なの。澄人さんが子供を引き取ったら、子供が母親を恋しがったらどうするの?私のために姉さんを敵視するのはもうやめて。私と澄人さんは縁がなかっただけなの」
彼女は藤堂瞳の手をしっかりと握り締めた。「義理の姉妹になりたかったけど、姉さんの子供を小さい頃から母親のいない環境に置くのは忍びないわ。だから...もういいの。私たちは姉妹のままでいましょう?」
木村靖子は、自分がこのように譲歩すればするほど、藤堂瞳の九条結衣に対する反感が強まることを知っていた。
できればあの私生児が藤堂家に戻れないようにできたら最高だ。
藤堂瞳は考え深げに頷きながらも、不満げなため息をついた。「でも、九条結衣をこのまま許すのは納得できないわ。あの時、兄をあんな風に扱って、計算づくで結婚までさせた悪女よ。そんな女が兄にふさわしいはずがない」
藤堂瞳は話すほど腹立たしくなってきた。「兄は九条結衣に何か薬でも盛られたんじゃないかしら。どうしてあんな女に騙されたのかしら」
一方、九条結衣の方では。
藤堂瞳たちが追い払われた後、九条結衣は思考を整理し、心の中でため息をついた。
藤堂瞳の敵意の理由が分からない。藤堂澄人と結婚して以来、ずっと自分を敵視し、目の敵にしてきた。
きっと自分の八字が藤堂家の兄妹と相性が悪かったのだろう。