361.嘘つき

彼の眼差しは、氷のように冷たく、夏川雫を凍りつかせた。「夏川雫、今度こそ、本当に終わりだ」

彼は背を向けて歩き出し、数歩進んでから立ち止まり、背を向けたまま言った。「安心しろ、母さんのことは、俺が対処する」

田中行の足音が遠ざかっていくのを聞きながら、夏川雫は全身の力が抜けていくのを感じた。静かにベンチに座り込み、ぼんやりと考え込んでしまった。

胃からの出血のせいで、藤堂澄人は安らかに眠れず、少ししか眠れなかった。

目を開けると、無意識のうちに九条結衣の姿を探した。病室の灯りは暗く、暖かい常夜灯の光で、藤堂澄人は病室の様子を確認することができた。

九条結衣は去っていた。

その事実に気づいた瞬間、藤堂澄人の心は急に沈んでいった。見慣れた痛みが、突然彼の心を襲った。