こんなに大げさにする必要ある?

松本裕司は藤堂澄人の冷たい表情を見つめ、もう一度尋ねた。「社長、調べてみましょうか?」

藤堂澄人は黙っていた。今朝、九条結衣が九条政から受けた電話のことを思い出し、九条政が私有財産を売却したことは、きっと九条結衣に関係があるのだろうと推測した。彼は彼女のことにあまり干渉したくなかった。

「必要ない」

「分かりました、社長。では失礼します」

「ああ」

松本裕司が去った後、藤堂澄人の病室には彼一人だけが残された。

一人になると、彼は九条結衣のことを考え始めた。九条結衣のことを考えると、自然と結婚していた三年間の日々を思い出してしまう。

あの頃、彼は九条結衣を憎んでいたはずなのに、彼女と向き合うたびに、つい何度も見つめてしまうのを抑えられなかった。

しかし彼女が近づいてくると、まるで蠅を追い払うように彼女を追い払おうとした。いつもそうだった。