384.結婚式場を解体する

田中さんは一瞬戸惑い、遠くの結婚式場を見て、難しい表情を浮かべた。「お嬢様、あれは旦那様の結婚式用のものですが、もし撤去したら、旦那様に問われたら…」

「これはお爺様の意向よ」

九条結衣は不機嫌な表情で田中さんの言葉を遮った。「言われた通りにすればいいの。何を恐れることがあるの」

田中さんは九条結衣がそこまで言うなら、もちろん怠慢にはできなかった。

ちょうどここ数日、九条家全体が木村家の母娘に悩まされていた。もし老夫人が入院していなければ、彼女たちがこんなに好き勝手にできるはずがない。まるで九条家が自分の家だと思い込んでいるようだった。

旦那様の目は糞で曇っているのか、本物の真珠が見えないのに、くだらない魚の目玉を真珠だと思って大事にしている。

「かしこまりました、お嬢様。すぐに人を呼んでまいります」

田中さんが去った後、九条結衣は庭のパラソルの下に座り、使用人が淹れたての珈琲を脇に置いた。

木村家の母娘が戻ってきた時、九条結衣が庭に座り、後ろには黒服のボディーガードが一列に並んで、威圧的な雰囲気を醸し出していた。

以前九条結衣に痛い目に遭わされたことを思い出し、母娘は思わず体を震わせ、その場に立ち止まった。

前回の経験があったため、彼女たちはもう九条結衣と正面から対立する勇気はなかった。

九条結衣は彼女たちを見たが、一瞥もくれず、ただ脇に置いてあった珈琲を取り上げ、ゆっくりと一口飲んだ。

木村家の母娘は九条結衣と対峙する勇気がなく、相手にされないのを見て、事を荒立てようともせず、そのまま家に入ろうとした。

数歩進んだところで、遠くの大きな庭で、数日前に自分が丹精込めて準備した結婚式場が、何人かの使用人によって解体されているのを目にした。

その瞬間、木村富子の顔が真っ黒になった。

「何をしているの！みんな止めなさい」

彼女は歯ぎしりしながら駆け寄り、女中の一人の頬を平手打ちした。

「目が見えないのか、ここがどこだか分からないの？勝手に解体するなんて！」

木村富子は肺が破裂しそうなほど怒っていた。この結婚式のために、どれほど心血を注いだことか。結婚式に参加する人たちに笑われたくなかったのだ。

今回、こんな大きな名家である九条家に嫁ぐことになって、彼女の女友達は誰もが嫉妬で目を赤くしていた。