九条結衣は、あの不倫カップルが自分に何かできるとは少しも恐れていなかったが、お爺さんがこれほど興奮しているのを見て、承諾することにした。
それに、あの厚かましい二人にお爺さんの家を汚されたくもなかった。
お爺さんとしばらく話をして、疲れて眠りについたのを見計らって、九条結衣は静かに病室を出た。
入院棟を出ると、藤堂家のリンカーンがまだ止まっているのが目に入った。
車内の人も彼女に気付いたようで、ドアが開き、運転手が彼女の方へ歩み寄ってきた。
「奥様、大奥様が車でお待ちです。」
九条結衣は少し驚いた。お婆様は1時間前に帰られたはずなのに、ずっとここで待っていたのだろうか。
九条結衣は運転手の昔の呼び方も気にせず、急いで車に向かった。
「お婆様。」
「お茶でも飲みに行きましょう。」