422.卑劣で汚らしい責任感のない男

爺さんの言葉は、明らかに遠藤隼人に向けられており、危険に満ちた声色には、背筋が凍るような警告が含まれていた。

九条愛は今回の帰省で、終始無神経な様子を見せており、九条結衣に遠藤隼人の不倫の話をした時でさえ、何事もないかのように振る舞っていた。

しかし、父親がこのように力強く自分を守る言葉を発し、自分のために立ち上がってくれるのを聞いて、瞬く間に目が潤んでしまった。

心の中の悔しさと苦さが一気に込み上げ、爺さんの側に寄って、声を詰まらせながら「お父さん...」と呟いた。

「お母さん」

九条愛が口を開こうとするのを見て、遠藤晶はすぐに彼女の言葉を遮った。彼女は九条愛の側に寄り、腕を取り、目に懇願の色を浮かべた。

「お父さんとはもう30年近く連れ添ってきたのよ。些細なことじゃない。どうして曾祖父を心配させるようなことを...それに、お父さんがわざわざここまで来て謝ってるのに、お母さん...」

遠藤晶の言葉が途中まで出たところで、九条愛に手を振り払われた。

彼女は表情を硬くし、母親の目に宿る冷たさと嘲りを見て、心が沈んだ。「お母さん」

「あなたたち本当に親子ね。遠藤隼人があなたと同じくらいの年の女の子と寝て、何十年も連れ添った妻を裏切ったことが、あなたにとっては些細なことなの?」

九条愛の言葉が終わるや否や、九条爺さんの顔色が一気に険しくなった。「愛、今なんて言った?」

遠藤隼人と遠藤晶の顔色も、急に青ざめた。

彼らは九条愛と遠藤隼人が何十年も夫婦だったのだから、夫婦の情を考えて、事を大きくはしないだろうと思っていた。

まさか彼女が遠藤隼人の醜聞を暴露するとは思わなかったし、それも爺さんの前でとは。

遠藤隼人は最初に九条家を訪れた時から、爺さんをとても恐れていた。今、醜聞を暴露され、顔から血の気が引いた。

彼は乾いた唇を動かし、九条愛を見つめながら、かすれた声で言った。「愛、信じてくれ。あの女子学生に計略にはめられたんだ。薬を盛られて...」

言葉が終わらないうちに、九条愛は彼の頬を平手打ちした。傍らの遠藤晶が驚いて悲鳴を上げた。