421.九条家の娘は、損をしない

彼は遠藤隼人という婿をあまり気に入っていなかったが、娘が好きだというので、そのままにしていた。

この数十年、夫婦二人の生活は悪くなかったので、特に何も言わなかった。

しかし、彼は老いぼれてはいない。この娘は何もなければ遠くから帰国して滞在したりはしない。もし遠藤隼人が単に娘の機嫌を損ねただけなら、わざわざ遠くから帰ってくることはないはずだ。きっと遠藤隼人が何か許されないことをしたに違いない。

「お父さん……」

九条愛が何か言おうとしたが、老爺の威厳のある眼差しで遮られた。

「皆、入りなさい」

九条爺さんは遠藤父娘を見て言った。

遠藤晶は居間にいる数人を見た後、愛想よく老爺の前に歩み寄り、老爺の腕を掴んで甘えるように揺らしながら言った:

「おじいちゃん、ママとパパが喧嘩したの。ママを説得してあげて、パパのことを怒らないでって。こんな年になってまで、こんなに意地を張るのはよくないわ」

九条結衣は遠藤隼人が何をしたのか知っていた。本来これは伯母の家庭の問題で、彼女は関わるつもりはなかったが、この遠藤晶は何を言っているのだ!

彼女は自分の父親が何をしたか知らないのか?

いや、仮に知らないとしても、母親に対して、年齢を理由に意地を張っているなどと、娘の立場で非難できるものではない。

九条結衣の表情が急に曇ったが、伯母が何も言わないので、結局我慢することにした。

しかし、いつも娘を溺愛していた老爺は遠藤晶のこの言葉を聞いて、すぐに怒り出した。

この孫娘を見る目にも不満が混じった。

「そうか?では、お前の母さんがなぜお前の父さんと喧嘩したのか、どう意地を張っているのか、説明してみなさい」

遠藤晶の表情が凍りつき、同時に九条愛の前に立つ、困惑した表情の遠藤隼人に視線を向けた。

老爺がそう尋ねるのを聞いて、遠藤隼人は懇願するような目で九条愛を見た。明らかに老爺の前で事の真相を話してほしくないという様子だった。

九条愛はさっき娘が夫に肩入れする言葉を聞いていた。何が起きたか知っているくせに、よくも母親のことを意地を張っていると言えたものだ!

本当に白眼狼を二人も育ててしまったものだ。自分の食べ物を食べ、飲み物を飲み、一人は裏切り、もう一人は裏切った人の味方をして自分を非難する。