父と子は笑顔で話し合い、とても楽しそうな様子だった。
九条初を見ると、以前見たような悲しみや不満の表情はなく、藤堂澄人が何を話したのかは分からないものの、息子が普段の様子に戻ったのを見て、ようやく安心した。
藤堂澄人の視線がちょうどその時、彼女に向けられた。深い瞳の奥に、優しさと愛情が宿っているのを見て、九条結衣の心臓が一拍飛び跳ねた。慌てて視線を外し、脇に立った。
藤堂澄人が九条初を抱いて階段を降り、彼女の側まで来ると、彼女は躊躇いながら口を開いた。「母が九条初の面倒を見てくれて何日も経つので、私たち、先に家に帰りましょう。」
九条結衣のその言葉の中の「私たち」という言葉は、彼女の潜在意識の中で、彼と母子二人を自然と一つの輪の中に入れていた。そのような認識に、藤堂澄人の唇の端が嬉しそうに上がり始めた。
「ああ。」
九条家の運転手は既に車を用意して玄関に停めており、全ての準備が整った後、九条結衣は小林静香に一言伝え、三人家族で九条結衣が住む市の中心部の家へと向かった。
市の中心部のマンションに戻ると、定期的に家政婦が掃除に来ているため、汚れてはいなかった。
「初は先に一人で遊んでいて。ママが荷物を片付けてから一緒に遊ぼうね。」
以前なら、九条結衣は間違いなく何も言わずに自分のことを済ませていただろう。今回のことがあって初めて、自分が九条初に対してあまりにも疎かにしていたことに気付いた。
藤堂澄人は非常に積極的に残って九条初と遊んでいた。九条結衣が上がってすぐ、インターホンが鳴った。
マンションの管理人だった。ドアを開けた藤堂澄人を見て、彼女は明らかに驚いた様子だった。
藤堂澄人が数ヶ月前に突然彼らのマンションで一室を購入したことは、ここでは秘密ではなかった。
Z国のトップに立つような人物が突然目の前に現れたことは、間違いなく衝撃的な出来事だった。
彼らのマンションはC市の中心部にあり、立地は良く、価格も安くはないが、豪華な住宅とは言えない。彼らの心の中では、藤堂澄人のようなビジネス界の大物が家を買うなら、金持ちが集中して住む豪華な別荘地区であるべきで、マンションではないはずだった。それも一フロア一戸ではない type のマンションなのだ。
このような大物に仕えることができるということで、管理人たちは誇らしい気持ちを抱いていた。