405.顔がでかすぎて洗面器にも収まらない

九条愛は軽蔑の眼差しで九条政を上から下まで見渡し、嘲笑うように言った。「あなたの面子を立てろって？どこにそんな面子があるの？そんな大きな顔して、洗面器持ってきて入るかどうか試してみる？」

あの三人は結衣の命を危険にさらしたのに、よくもまあ、そんな当然のように水に流そうなんて言えるものね？

母さんが彼を妊娠してた時、食中毒でもなって九条政の脳みそが毒されて、毎日知的障害者みたいに知能の下限を見せつけてるのかしら？

九条政は九条愛のこの言葉にまた顔を歪ませて怒り出した。「九条愛、黙れ！俺の家のことにお前が口を出す筋合いはない！」

そんな生意気な口を利くなら、死んでしまえばいい。

「あなた…」

九条愛がまた九条政に飛びかかって罵ろうとしたが、九条結衣に止められた。

九条結衣が階下に立っているボディガードに向かって言うのを見た。「階段の監視カメラの映像を取り出して、警察に通報して。」

「警察」という言葉を聞いて、木村富子はさらに足がすくんだ。彼女の娘は今も拘置所から出られないでいるのに、自分までそこに入ることになったら、どうすればいいのか。

「政さん！」

九条政は九条結衣が木村富子を簡単には許さないことを知っていた。こんな良い機会が目の前にあるのに、九条結衣が見逃すはずがない。

さっきの無力感が再び心に押し寄せてきた。彼も木村富子が余計なことをしたことに腹を立てていた。何もあの閻魔様のような九条結衣を突き落とすことはなかったのに。

九条結衣の前に歩み寄り、言った。「結衣、人を許すべきところは許すべきだ。彼女があなたを階段から突き落としたのは間違いだが、今あなたは無事にここに立っているじゃないか。今回だけは許してやってくれ。約束する、二度と彼女をあなたの前に連れてこない。」

九条結衣は木村富子の先ほどの行為について、監視カメラで故意の傷害が証明できるものの、自分は踏ん張れて大きな被害は出なかったため、木村富子を逮捕しても数日の拘留で済むことを知っていた。

九条政の言葉は気持ち悪かったが、今は確かにこの不倫カップルに構っている余裕はなかった。

しかし、そう簡単に木村富子を許すわけにもいかない。

唇の端を少し上げ、言った。「いいわよ、話し合いましょう。」