「結衣に頼んでどうするの?自分から恥をかくだけよ。私生児が法を犯したから、嫡出子に助けを求めるなんて、よくそんなことができるわね」
ソファに座った九条愛は、ものぐさそうに目を上げ、階段を上ろうとしている九条政を見て、「あなたはバカね」という軽蔑の眼差しを向けた。
「九条愛、黙れ!」
九条政は歯を食いしばり、九条愛を絞め殺したい衝動を必死に抑えた。
九条愛が肩をすくめ、諦めたように手を広げるのを見て——
「どうしても自分から恥をかきたいなら、私に何が言えるというの。安らかに眠れることを祈るわ」
「九条愛!」
「政さん!」
木村富子は事態が悪化するのを恐れ、急いで彼女を制止した。
今や彼女は、九条愛がわざと政さんを怒らせて、あの賤人の結衣に助けを求める機会を潰そうとしているのではないかと疑っていた。
九条政は歯を食いしばり、九条愛を睨みつけてから、怒りを抑えきれない様子で階段を上っていった。
九条結衣が頬に薬を塗り終えたところで、九条政が戸口に立って彼女を呼ぶのが聞こえた。「結衣、ちょっとドアを開けてくれ。話があるんだ」
最初よりもずっと柔らかな口調だった。
なかなか融通が利くものね。
九条結衣は眉を上げ、完全に無視することにした。
ゆっくりとお風呂に入り、パックをし、スキンケアをする間、頬のティーカップに当たった部分がまだ痛みで眉をひそめるほどだった。
九条政がよくも顔向けできるものだと思った。
部屋着に着替えて部屋を出ようとドアを開けたとき、外に立っていた男女に驚いた。
彼女は九条政の木村靖子への愛情に感心せざるを得なかった。靖子のためなら、彼が憎んでいる娘の前でここまで頭を下げられるのだから。
もし子供の頃の自分だったら、おそらく靖子に対する嫉妬で彼女を破滅させたいと思っただろう。
九条政はドアの外でずっと待っていて、やっと九条結衣が出てくるのを見ると、胸の中の怒りを必死に抑えた。
「話がある」
九条政は前に出て、声を柔らかくした。
「私にはあなたと話すことなどありません」
九条結衣は彼を避けて階下へ向かった。
「結衣!」
九条政が手を伸ばして彼女を掴もうとしたが、九条結衣にさらりと避けられた。
九条政が諦めずに自分に頼ろうとしているのを知って、九条結衣はイライラし始めた。
「一体何がしたいの?」