しかし、九条愛はちょうどその時足を捻挫してしまい、九条政が投げた杯を避けることができなかった。
九条結衣は事態を察知し、九条愛を引っ張ろうとした瞬間、偶然にも九条政の手から放たれた杯が結衣の顔面に直撃した。
九条結衣は肌が白いため、その一撃で即座に大きな赤みが浮かび、痛みで顔が歪んだ。
この出来事に、九条政と木村富子は呆然となり、居間は一瞬にして静まり返った。
「大丈夫、結衣?」
九条愛は急いで結衣の前に歩み寄り、顔の傷を確認した。
「大丈夫よ」
ただ、杯が固く、九条政が投げた力も相当なものだったため、顔に傷が残るのは確実だった。
九条結衣は痛む頬を撫でながら、九条政に冷たい視線を向けた。
九条政は今回、結衣に頼み事があって来たのであり、彼女と言い争うつもりは全くなかった。もし九条愛というあの賤女がいなければ、こんなことにはならなかったのに。